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市島啓樹の12局(5)

           (9)余詰屋本舗

9 市島啓樹

          (詰パラ 平成10年10月号)

43龍、64玉、73龍、54玉、43銀、44玉、34銀成、54玉、43龍、64玉、  56桂、同馬、73龍、54玉、44成銀、同玉、43龍迄17手詰。

 ペンネームを使って発表された本作、恐らく年賀詰なのだろう。たった17手で龍が二往復半もするという、初形曲詰にしては美味し過ぎる手順。作者としては肩の力を抜いて作った心算かもしれないが、何を手掛けても器用に纏めるその才能が羨ましい。

           (10)市島啓樹

10 市島啓樹(19手詰)

          (近代将棋 平成8年3月号、第87期塚田賞)

33飛、25玉、34角、35玉、12角生、25玉、36銀、同と、34角生、15玉、 13飛生、同香、16歩、24玉、43角成、23玉、24飛、同玉、34馬迄19手詰。

 初手33飛は13歩に当ててまずは妥当な着手だし、続いて34角の短打も15玉の変化を見越した味の良い手。しかし35玉とされると、手は限られているのにその後の展開がなかなか見えてこない。角を成ると34馬に15玉で打歩が打開できず、かといって不成で開いても34角にまた35玉と潜られる。
 しばし堂々巡りをした後に、局面打開のキーとなる手が36銀であることに気付いた瞬間が解図の醍醐味というものだろう。この手の意味付けがすぐには分からないところに、本作の値打ちがある。もしこれが56角と引く為だったりしたら、こんなにも感動しなかっただろう。
 12角生として香筋を消しておいて36銀から34角生と戻れば、今度は15玉の一手(35玉なら43角成、45玉に34馬が成立するのだ!)。後は、飛を2枚とも消す理想的な纏め。これだけのことをたった盤面9枚で実現させた手腕は見事という他ない。完成度という点では氏の中編の中でも屈指の作。

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