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M.Caillaudレトロプロブレム傑作選(46)

(46) Michel Caillaud (Probleemblad 01/2001, Special Prize)

H#2 (12+13)

 この局面からH#2で詰める手順は、1.cxb6 d6 2.bxc5 Rxb8#
及び 1.Ba7 Bxa7 2.0-0-0 Rb8# の2通りある。そして作意は、明らかに前者である。つまりこれは、「黒のキャスリングが不可能であることを証明せよ」という問題なのだ。例によって、キャスリングが可能であると仮定して、局面を分析していこう。

 なくなった駒は白がQRSPの4枚で、黒はQSSの3枚。特に、黒の4枚のRのうち2枚は成駒である。また、白はb,c,f筋でPによる駒取りをしていて(axb, bxc, exf)、一方黒もc,d,f,g筋でPによる駒取りをしている(dxc, exd, gxf, hxg)。そして、この駒取りの合間にa,b筋の黒Pがそれぞれ直進してRに成っているのだ。この成は

(1)b筋の白Pがc筋で駒取りをする
(2)b筋の黒Pがb1でRに成る
(3)a筋の白Pがb3で駒取りをする
(4)a筋の黒Pがa1でRに成る

という順で起こる筈だから、白Sa1は黒側の成がすべて終了した後でここに入ったことになる。つまり、この後更に

(5)白Sc2がa1へ
(6)黒Pc3-c2としてから黒Rをc3へ
(7)黒Pd3としてから黒Rをd4へ

という順で局面が進んでいったことになるので、最後の駒取りは黒Ph5xg4だと判明した。
 するとh筋の白Pはh8で成っていて、しかもこの成駒は今も取られずに盤上にいることになる。それが白Rb5であることは、少し考えてみれば分かる筈だ。つまり、局面をほぐすには、c6に白Kを挟んでRb5を解放し、それをh8でunpromotionすればよいということが分かった。

 しかし左上の局面を見ると、このままでは白Kがb4-a5-a6-b7-c6と侵入する際に、どちらのBでa7を塞ぐにしても途中で黒が手詰まりになってしまうことは明白。これを防ぐ為に、まずは準備工作として双方のBの位置を入れ替えておく必要があり、その為にe3の空間が利用できる。

Retract:1-5.Be3-c1-a3-b4-a5-b6 Ba3 6-8.Kh4-h5-h6-h7 Be1
9-13.Bb6-a5-b4-a3-c1-e3 Bb4

           (図1)

 これで、白Ba7の瞬間に黒が手詰まりになることはなくなった。
次の問題は、どうやって白Kと黒Bが入れ替わるかだが…。

14-22.Ka2-b2-c1-d2-e1-f1-g1-h2-g3-h4 Ba3 23.Ba7-b6 Bc1-a3 24.Ka3-a2 Be3-c1+ 25.Kb4-a3 B--

           (図2)

 a2に一旦待機することで、無事に白Kと黒Bがすれ違うこともできた。後は予定通り、白Kをc6に運べば良い。

26-29.Kc6-b7-a6-a5-b4
30.Rb6-b5 31-32.Ba6-b5-a4

           (図3)

 Rをunpromotionするには、Rb6-h6-h8と移動するのが最短。しかしKは再度自陣を通過してg8まで、盤面をほぼ一周せざるを得ない。

33-48.Kg8-h7-h6-h5-h4-g3-h2-g1-f1-e1-d2-c1-b2-a3-b4-b5-c6 49-50.Rh8-h6-b6 51.h7-h8=R

           (図4)

 一見、これで逆算に成功したように思える。ところが実際には、この手順は無効なのだ。上の手順をよく見てもらいたい。50.0手の間、駒取りもPの着手もないので、このゲームは所謂「50手ルール」によりドローとなってしまうのだ!
 以上より、出題図において黒はキャスリング不可であり、作意は確かに1.cxb6 d6 2.bxc5 Rxb8#のみであることが証明された。

 ちなみに本作、以前紹介した(20)と基本的な構想部分(左上の部分)が類似している。

(20) Michel Caillaud (Europe Echecs 310 10/1984, Com)

H#1.5* (12+13)

(20)の手順については、以下を参照のこと。
M.Caillaudレトロプロブレム傑作選(20)|青のKK|note

 恐らく前作を作っている際に、Bの位置交換を加えると更に手数を長くすることができ、すると50手ルールと絡めることができることに気付いたのであろう。豊かな発想力に感心させられる。

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