私家版・近代将棋図式精選(82)
(161)有田辰次
(近代将棋 平成6年1月号)
第83期塚田賞
16飛、イ15銀、23角成、25玉、24飛、同銀、34馬、同馬、26金迄9手詰。
イ桂合なら24金、同玉、23飛、14玉、13飛成以下同手数駒余り。
合駒を動かし、大駒の連続捨てで締める。この簡素形にこれ以上何を望めようか。古典的だが美しい作。
(162)植田尚宏
(近代将棋 平成6年1月号)
11桂成、同玉、33角、22歩、同角成、同玉、31角、23玉、33桂成、同桂、
13角成、32玉、31馬、23玉、24歩、14玉、15歩、同銀、25金、同桂、
13馬、同玉、33飛成、12玉、23歩成、11玉、22龍迄27手詰。
植田氏独特の手のタッチは、中編になっても変わらない。決して力まず、肩肘張らず、爽やかに収束まで流れていく。個々の手に特筆すべきものはないのに、全体を通してみると紛れもなく作品になっている。これこそ至芸と呼ぶべきであろう。
(163)柏川悦夫
(近代将棋 平成6年3月号)
*修正図
24金、同桂、25桂、同馬、33飛、14玉、23銀、13玉、22銀成、同玉、
42飛成迄11手詰。
初手24金の不利感、桂の利きに放つ33飛の快感、そして両王手をかけない22銀成の奇妙な感触。巨匠柏川氏は、一手一手の持つこうした質感に非常に敏感な作家であった。
勿論構想作を否定する心算はないが、結局のところ短編作家に最も必要なのはこうした感覚だという考えは、今も私の中では変わらないままだ。その意味で、短編作家にとって柏川悦夫は永遠の規範である。
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