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温故知新(詰パラ362号)

 今日は詰パラ362号(昭和61年4月号)を読んでみることにしよう。しばらくページをめくると、短大の結果稿に春山時男さんの文章が載っている。

「今日はどうでした?」と、詰朗会から戻ると家内が切り出してきた。
「楽しかったよ、最高に――」
「じゃまだったンでしょう、――言われなかっただけ…」
「そんなことはないさ」
「言われなくって良かったわネ」
「そんな青年たちじゃないよ」
「どこへでも首を突っ込むじいさんだから…」
「なにを…」と言おうとしたけれどやめにした。向こうには助っ人が5人も居るんだから…。その代わり珍しくビールを飲みながら思わずニッコリすると一同、「今日のおやじ、どうかしている―」だって。
(以下略)

 いつの時代も詰キストの会合はこんな感じであって欲しいものだ。私も春山さんを見習って、あと20年位したら「どこへでも首を突っ込み、青年たちにうるさがられるじいさん」になろうっと。

 では、学校から2題引用しておこう。まずは幼稚園から。

           高野利通

(詰パラ 昭和61年4月号)

86角、36玉、26飛、37玉、59角迄5手詰。

 ひょいと角をあさっての方向に引くのが妙手。この頃の幼稚園の王道を行っている作品という感じがする。

           橋本孝治

(詰パラ 昭和61年4月号)

37歩、同成銀、58角、47成銀、37銀、27玉、49角、38成銀、28銀、36玉、
「58角、47銀、37歩、同成銀、同銀、27玉、49角、38銀成、28銀、36玉」
『58角、47歩成、37銀、同成銀、同銀、27玉、49角、38と、28銀、36玉』
「58角、47銀、37銀…28銀、36玉」
「58角、47銀、37歩…28銀、36玉」
『58角、47香成、37銀…28銀、36玉』
「58角、47銀、37銀…28銀、36玉」
「58角、47銀、37香…28銀、36玉」
『58角、47香成、37銀…28銀、36玉』
「58角、47銀、37銀…28銀、36玉」
「58角、47銀、37香…28銀、36玉」
『58角、47香成、37銀…28銀、36玉』
「58角、47銀、37銀…28銀、36玉」
「58角、47銀、37香…28銀、36玉」
58角、47龍、37銀、同成銀、同銀、
27玉、17金、同玉、28銀、16玉、17銀打、同龍、25角、同金、17銀、同玉、28金、16玉、17飛迄159手詰。

 恐らく橋本氏は、従来私たちが用いてきた「攻方/玉方」という二分法を「盤上の攻方駒/盤上の玉方駒/攻方の持駒/玉方の持駒」という4種類のフェイズに細分することにより、趣向手順をより複雑化しうるということに気付いた最初の作家だ。
 例えば本作では、玉方は17金-28銀という順を防ぐ為、常に38に金の利きを持つ駒を配置しなくてはならない。この為に、47への合駒/38の駒/攻方の持駒がそれぞれ(成香/成銀/銀)→(銀/成香/銀)→(銀/成銀/香)と移り変わり、結果として3サイクルで1枚香が剥がれることになる。

           (52手目の局面)

(成香/成銀/銀)

           (62手目の局面)

(銀/成香/銀)

          (72手目の局面)

(銀/成銀/香)

 この手順中「一旦盤面に合駒として発生し、それから攻方に剥がされる」というのがポイントである。この手法はイオニゼーションにも駒種類を変えて利用されているが、更なる発展的な応用がありそうな感じがする(もっとも、実際に図化するとなると相当難しいだろうが)。

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