楽しいレトロプロブレム(29)
(28)Luigi Ceriani (Vittorio de Barbieri Memorial Tourney 1943, 1st Prize)
まずは取られた駒の確認から。白はQBSPPPPの7枚、黒はSSRPの4枚です。黒の最終手は明らかにQd8-e8+ですね。これが駒取りでなかったとすると白がretro-stalemateになってしまうので、ここでは黒Qが白Qを取ったとして話を進めましょう。
(図1)
次の目標は白Kを脱出させることです。それには黒にBf8-g7, Pg7-g6と戻してもらわないといけませんが、このとき黒Bが白駒を取っていることは明らかで、それがSであることもすぐに分かります。
(図2)
この状態からSh5-g7 Pg7-g6+と戻すことで、白Kの解放にも成功しました。 次に着目すべきなのは、白Rh8です。これが成駒なのはすぐに分かますね。黒Rh7の方は逆に成駒ではあり得ないので、これと干渉しない為にはg筋の白Pが2度駒取りをしてg8で成る必要があります。
そうすると、Pがg8で成ってh8に移動してから白Sがg8に入ったことになりますが、勿論その直前にいる場所はf6しかありません。すると、以下のような局面になってしまいます。
(図3)
このままだと黒は白Sf6を取らざるを得ません。これを避けるための手段は一つしかありませんが、お分かりですか?
つまり、白がSf6とした時点で既に黒Qは存在しなかったのです!即ち、黒Qは原型位置で取られていたことが示されました。 従って、出題図でチェックをかけている黒Qは成駒です。
では、この成Qはどこで発生したのでしょうか?先程の局面を見ればお分かりのように、白のe-h筋のPのうちg8で成ったもの以外は、もう成ることはできませんから、a筋の黒Pに取られる可能性もありません。よって、黒Pに取られたのはBとRです。ということは、黒Pが成るためにはまずb筋でRを取った後、a2でBを取るしかありませんね。そして白Rに移動してもらい、a1でQに成ったのです。
という訳で、「黒Qの初手は?」という問いに対する最終的な解答はQa1-a2ということになります。お分かり頂けたでしょうか?
よく整理された配置に潜む、奥深い論理。レトロの巨人Cerianiの名作でした。
(29) 橋本 哲(Probleemblad 2007)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?