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私のベストテン(第5回)

       (5) 高坂 研(twitter 平成27年2月22日)

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          かしこ詰 9手(透明駒0+1)

18馬、同玉、27銀、17玉、X、19銀生、18銀、同玉、27馬迄9手詰。

 本作は、透明駒にレトロを組み合わせた一号局である。だが、twitterで発表して間もなく、「透明駒の現在と可能性」(この詰将棋がすごい!2015)に参考図の一つとして採用されてしまった為、通常の形では発表されていない。なので、ここで少し詳しく手順を説明しておきたい。

 4手進めると、以下の局面になる。

          (5手目の局面) 

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 これが問題の局面。ここで攻方はXとするが、これに対し29銀生として「攻方が初手で取った透明駒は成桂だった」と玉方に主張されたら、どうすればいいのだろうか?

          (逃れ図?) 

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 しかし、それはあり得ないことが、以下のように証明できる。(ここからは簡単なレトロ解析である)

          (18成桂のある図) 

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 初形において18に成桂があったとして、矛盾を導こう。出題図で攻方の手番ということは、この直前は玉方の着手だった筈である。すぐに分かる通り、その手は28銀しかない。すると、更にその前の手として、先手は37馬を戻すしかない。

          (2手戻した図) 

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 ここでもはや玉方の着手は(illegalなものを除いて)存在しない。即ち、出題図において、透明駒が18成桂だとすると不可能局面である(勿論、桂以外の駒なら18に打つことができるので逆算可能だ)。よって、6手目29銀生もまたあり得ないという結論が得られる。従って、玉方は6手目19銀生として5手目の着手が19飛(又は香)だったと主張するのが最善となり、以下は簡単に収束する。
 一号局だけあって配置もややぎこちなく、無駄に手数が長いような気もするが、作者としては愛着のある作品である。

 尚、レトロ解析を用いる際には、「出題図は合法な局面である」というのを暗黙の前提としている。これについては、異論もあろう。確かに、詰将棋であるための要件として「王手の連続で詰める」とか「作意順で詰上りに持駒が余らない」というのはあるが、「初形が合法である」というのは明記されていない。 
 だが一方で、初形局面に二歩があったり、行き所のない駒があったりするのは明らかに認められないのだから、「初形が合法である必要はない」というよりは、これまで初形の合法性について厳密に定義する必要を感じていなかったという方が正しいのだと思う。
 私としては、せめて双玉だけでもいいので、「局面の合法性」も詰将棋の成立要件に加えてもらいたいと思っているのだが、読者の皆さんはどうお考えだろうか。


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