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楽しいレトロプロブレム(23)

(22) Henry Anthony Adamson (The Problemist Fairy Chess Supplement 1932)

#2 (11+12)

 まずはなくなった駒を調べておきましょう。白がBPPPPの5枚で、黒はBSSPの4枚ですね。白の駒取りはb筋のPによるものと黒Bf8の2枚。黒の駒取りはb筋のPによるものとPe6による2枚が判明しています。
 さて、ここで黒のcastlingが可能だと仮定します。現在白番ですから、直前の手は黒によるものですが、それは何でしょうか?黒はcastling可能と仮定したのですから、直前の着手はPc6xb5,Pd7xe6,Pf7xe6のいずれかですね。そしてPc6xb5及びPd7xe6ならBa4が、Pf7xe6ならRa7がそれぞれ成駒であることが判明します。
 例えばPd7xe6の場合、Bc8に加え黒Qもb8-d8のいずれかで取られています。従ってb筋の白Pは黒Sを取ったことになり、これで白の駒取りは尽きています。つまり、白のなくなったPはどれも成ってはいないのです。

 一方、f筋の黒Pはf1でBに成っていますが、白Kにチェックをかけずに成ろうとするとPg2xf1=Bとするしかありませんね。ところが白のなくなった駒は黒桝BとPですから、これは不可能です(∵f1で取るべき白駒がない)。よって白Kは不動ではあり得ないので、白のcastlingは不可能であることが分かります。Pf7xe6の場合もほぼ同様の推論により、同じ結論が得られます。ちなみに、Pc6xb5という逆算は、「黒の0-0-0が可能」という条件下ではillegalです(白が成駒を2枚発生させる必要がある為。詳細は各自確認して下さい)。

 以上より「黒がcastling可能ならば白はcastling不可能」ということが証明できました。この対偶を取れば「白がcastling可能ならば黒はcastling不可能」という命題も真であることが分かります。つまり、この局面は白黒どちらか一方にしかcastlingの権利がないのです!(こういう状況をmutually exclusive castlingと呼びます)
そこで作意はこうです。1.0-0!! Kd8 2.Rf8#
 白が先にcastlingしてしまえば、黒のcastlingの権利が消滅してしまう訳です。(勿論、1.Rf1??だと1...0-0-0!で逃れです)

 本作はこの筋の一号局。しかしどうしたことか、Dawsonはこの投稿作を25年も放置しておいたそうです(その為に、発表時期はHavelに先を越されてしまいました)。何となく、AbelとCauthyの確執を思い出しますね。

(23) Mark Kirtley, Michel Caillaud (Die Schwalbe 178 08/1999)

Proof Game in 9.0 moves (15+12)
2sols.

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