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L.Ceriani レトロプロブレム傑作選(10)


(10) Luigi Ceriani (Vittorio de Barbieri Memorial Tourney 1943, 1st Prize)

黒Qの初手は? (9+12)                    

 まずは取られた駒の確認から。白はQBSPPPPの7枚、黒はSSRPの4枚だ。黒の最終手は明らかにQd8-e8+だが、これが駒取りでなかったとすると白がretro-stalemateになってしまうので、とりあえず白Qを取ったとして話を進めよう。
           (図1)


 

これで白の手詰まりの心配はなくなった。次の目標はKを脱出させることだ。それには黒にBf8-g7, Pg7-g6と戻してもらわないといけないが、このときBが白駒を取っていることは明らかで、それがSであることもすぐに分かる。

           (図2)

 図2の状態からSh5-g7 Pg7-g6+と戻すことで、白Kの解放にも成功した。

 次に着目すべきなのは、白Rh8だ。これが成駒なのはすぐに分かる。黒Rh7の方は逆に成駒ではあり得ないので、これと干渉しない為には、g筋の白Pが2度駒取りをしてg8で成る必要がある。そうすると、Pがg8で成ってh8に移動してから白Sがg8に入ったことになるが、勿論その直前にいる場所はf6しかない。すると、以下のような局面になってしまう。

           (図3)

  このままだと黒は白Sf6を取らざるを得ない。これを避けるための手段は一つしかないが、お分かりだろうか?つまり、白がSf6とした時点で既に黒Qは存在しなかったのだ!即ち、黒Qは原型位置で取られていたことが示された。

 これまでの2作なら、ここで解析終了である。しかし、本作は更に踏み込んだ分析を必要とする。

 前述の通り、出題図でチェックをかけている黒Qは成駒である。では、この成Qはどこで発生したのだろうか?先程の局面を見ればお分かりのように、白のe-h筋のPのうちg8で成ったもの以外は、もう成ることはできない。よってa筋の黒Pに取られる可能性もない。よって、黒Pに取られたのはBとRである。ということは、黒Pが成るためにはまずb筋でRを取った後、a2でBを取るしかない。そして白Rにも移動してもらい、a1でQに成ったのだ!

 という訳で、「黒Qの初手は?」という問いに対する最終的な解答は、Qa1-a2ということになる。


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