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温故知新(詰パラ388号)

 今日は詰パラ388号(昭和63年6月号)を読んでみることにしよう。6月号といえば看寿賞発表だが、この年は短編と長編が相馬康幸氏(「ヒロエ詰」と「迷路」)、中編が若島氏の七種合だった。ここでは「ヒロエ詰」を紹介しよう。

           相馬康幸

(報知新聞 昭和62年3月23日、第26期看寿賞短編賞)

53金、同玉、45桂、54玉、53金、同と、同桂成、同玉、45桂、54玉、55歩、同と、53桂成、同玉、63香成、54玉、64成香迄17手詰。

 初手から45金-63香成-73金が52玉、64桂打、53玉で逃れるのに、金を一枚捨てて45桂と打つと62玉と逃げても詰むというのは何ともムシの良い設定だが、詰将棋の神様に気に入られるとこういう順もちゃんと成立してしまう。羨ましい限りである。
 こんな凄いことをやってのけてもなお軽やかさを感じさせるところが、この作者の真骨頂である。

それから、橋本、深井両氏の結婚祝賀詰も発表されている。その中から、「ヒロエ詰」とは対照的に気合の入りまくった新ヶ江氏の曲詰を引用してみよう。

           新ヶ江幸弘

(詰パラ 昭和63年6月号)

66銀、57桂成、43銀、63玉、52銀、54玉、57香、56桂、同香、64玉、63銀成、同玉、53香成、同玉、45桂、64玉、56桂、63玉、64香、54玉、87馬、76桂、同馬、同歩、46桂、同銀、44馬迄27手詰。

           (詰上がり「コ」)

 桂の連続移動中合と、その合間を縫う邪魔駒消去が解答者を唸らせる。確かどこかで作者が「この作品は、元は別々の素材だったものをドッキングさせた」と書いていたと思うが、曲詰でそんなことが本当に出来るのだろうか? 疑う訳ではないが、私には信じられない話である。

 続いて、短コンの首位作から。

           藤井美大

(詰パラ 昭和63年6月号)

67銀、77玉、69桂、同馬、76金、同馬、66銀引、同馬、68金、同馬、
97飛迄11手詰。

 初手が捨駒で入ったのがいい感じだが、残念ながら3手目以降の展開は有吉氏の作品と全く同じ。解説では触れられていないが、ここまでかぶっていると、後発の者が存在価値を主張するのは難しいだろう。

           *参考図 有吉弘敏

(詰パラ 昭和57年9月号、半期賞)

55銀、同馬、38桂、同馬、45金、同馬、35銀引、同馬、37金、同馬、
96飛迄11手詰。

 もう一作は、添川氏の名作。「全く同じ舞台での二種類の持駒変換」という離れ業をこんなシンプルな配置でやってのけた氏の超絶技巧を堪能して頂きたい。

           添川公司

(詰パラ 昭和63年6月号)

56銀、同玉、66飛、47玉、
「56銀、46玉、45銀、①56香、47歩、同玉」×4
56銀、46玉、45銀、56桂、47香、同玉、
『56銀、46玉、67銀、②56桂、47香、同玉』×2
56銀、46玉、67銀、③56銀、47香、同玉、56銀、46玉、67銀、④56香、
47銀、同玉、58銀、同歩成、59桂、同と、48飛、57玉、49桂、同と、
56飛、同玉、58香、57合、68桂迄71手詰。

①56桂は47歩、同玉、56銀、46玉、45銀、56香、47歩、同玉、56銀、
 46玉、67銀以下作意に短絡する。
①56銀は47歩、同玉、56銀、46玉、47歩、同桂成、55銀、同角、同銀、
 同玉、33角以下。
②56香は47香、同玉、58銀、同歩成、59桂、同と、48香以下。
③56香は47香以下作意に短絡する。
④56銀は同飛、47玉、58銀、同玉(同歩は48銀以下)、57飛、同玉、
 48銀以下。

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