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プロパラを振り返る(10)

 今日はプロパラ第5号。今回もフェアリー2作です。

(17) 上田吉一 (Problem Paradise 5, 1997) 

17 上田吉一

           SH=10 2sols.(3+4)
           Grasshopper e4; Lion g7; Kangaroo a8

Grasshopper:Qと同じ方向に、駒を一つ飛び越えてその次の桝に着地する。そこに敵の駒があれば取れる。
Lion:Qと同じ方向に、駒を一つ飛び越えてその先の任意の桝に着地する。そこに敵の駒があれば取れる。
Kangaroo:Qの線上で、任意の駒2枚(離れていてもよい)を飛び越したその直後の地点に着地する駒。そこに敵の駒があれば取れる。

1.Bc6 2.KGf3 3.KGb7 4.Be8 5.Bg6 6.Gh7 7.Gf7 8.Bh7 9.Bg8 10.KGh7 Lia7=
1.Bd1 2.Bf3 3.KGg2 4.Bg4 5.Bf5 6.Gg6 7.Gg8 8.Bh7 9.Gg6 10.KGg8 Lig1=

 こういうhopper系の駒って、元居た位置にもう一度戻れないことが多いんだなあ。チェスピースってP以外は前後左右全部同じように動けるので、何だか新鮮な気がする(←まさしく素人の感想だね)。 

 もう一作上田作を。この頃プロパラにはその名もUedaというコーナーがあり、そこでは上田さんが将棋盤の上にフェアリーピースをふんだんに使って独自の世界を表現されていた。その中から一作。作者自身による解説も、その思考の一端を窺わせて非常に興味深い。


(18) 上田吉一 (Problem Paradise 5, 1997) 

18 上田吉一

                                         SH#31 Maximummer (1+4)
                                         Grasshopper b7; Zebra h6; Kangaroo i2

Maximummer:隣接する桝目の中心から中心までの距離を1とするとき、黒は可能な着手の中で移動距離が最大の手を指すという条件。移動距離が最大の手が複数あるときには、黒はその中から選択できる。チェック及びメイトに関しては、オーソドックスと同じ。
Zebra:(2,3)leaper

1.Zf9 2.Zd6 3.Zb3 4.Gb2 5.Ze1 6.Zc4 7.Za1 8.Zd3 9.Za5 10.Zc2 11.KGa2 12.Ze5 13.Gf6 14.Zg2 15.Zi5 16.Zf3 17.Gf2 18.Zi5 19.Zg2 20.KGh2 21.Zi5 22.Zf7 23.Gf8 24.Zc5 25.Gb4 26.Zf3 27.Zi1 28.Zg4 29.Gh4 30.Ze1 31.Zh3 Ri6#

橋本 哲―Maxiによる手順の制御は面白い。でも検討は大変そう。答えていても他のシナリオがない、という確信を持ちにくいので、作意じゃないよ、と言われても不思議ではない気がする。そういう意味ではもう少し明快な方が(特に解かない人には)理解されやすいのかもしれない。

★橋本氏の感想は、ひょっとしたら本質をついた名短評なのだと思う。なぜならば、作者である私の頭の中には明快なシナリオなど、なんにもなかったのだから。駒を動かして遊んでいただけであり、手順などは私の意志に関係なく、現れてくるんですよ。
★頭の中のイメージは大変複雑なもので、そのまま図化する能力を人間は持ち合わせていないように思う。これは熟練した技術とは異なる意味においてである。マキシルールは使い方によって、複雑な世界の入り口まで我々を連れていってくれる特性を含んでいる。制御はコンピュータに直結する考え方だが、手作りの地点からでも少しだけ入り込める余地があり、楽しく遊んでおれば、それが発見へとつながってくる。以上のような経過を前提にしたとき、作意手順と呼ばれているものに、私の責任はない。ただし、何らかの選択を行っていることは確かであり、この選択がどのような感性に基づいているかを知れば、イメージの質が理解できるのではないか(もちろん詰将棋ばなれしたものだが…)。そして、切り捨てられた領域にこそ、もっと豊富な世界が隠れているのだ。
★原作は倍くらいの手数があったが、検討できそうもないし、別経路の順を消す案もなく、後半だけ図化した。人間の頭は、その程度のものなのさ。
(平成23年11月23日記)

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