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プロパラを振り返る(54)

 今日紹介するのは、上田さんのシリーズヘルプ。その明晰なロジックに支えられた手順構成を、できるだけ丁寧に解析してみることにしよう。

(123) 上田吉一 (Problem Paradise 28, 2003)

123 上田吉一

           SH#104 PWC (6+2)
           (0,0)-Leaper a2,f6
           Locust a1, g8
           Rook-Locust b4,c5

Series Help:黒だけが連続してn手指し、その後1手で白が黒をメイトできるような手順を求める。最終手を除いて、黒は白にチェックをかけてはならない。
Platzwechselcirce(PWC):駒を取るとき、取られた駒は取る駒が直前にいた位置に再生する。8段目に発生したPは任意の駒に成れ、その選択は取りを行った側が決められる。1段目に発生したPは動けない。
(0,0)-Leaper:自力では動けない駒。取られることはできる。
Locust:Qの筋で相手の駒を一つ飛び越したその直後の地点に着地する駒。飛び越された駒は取られて消える。取り無しでは動くことができない。
Rook-Locust:Rの筋で相手の駒を一つ飛び越したその直後の地点に着地する駒。飛び越された駒は取られて消える。取り無しでは動くことができない。

1.Kxc5(RLd6) 2.Kxb4(RLc5) 3.Ka3 4.Kxa2(Lpa3)

           (4手目の局面)

123-1 上田吉一

 まずは、a2にいる(0,0)-Leaperを動かしにかかる。3手目で一瞬ひやっとするが、LocustはGrasshopperではない(当たり前)ので大丈夫。この(0,0)-Leaperをf8まで引っ張っていき、それによってg8のLocustをh8に移動させるのが黒の最終目標だ。

5.Kxa1(La2) 6.Kb1...12.Kh2...17.Kh7 18.Kxg8(Lh7)

           (18手目の局面)

123-2 上田吉一


 5手目からすぐにKb3-Ka4-Kxa3とやりたいところだが、この局面でのKb3はillegal(g8のLocustに取られてしまう)。なので、まずは右端を経由してこのLocustの位置を変更しておくことにする。Locust及びRook-Locustの利きの為に、Kが縁にぴったり張り付いて歩かざるを得ないのは、逃走を図る脱獄犯を連想させる(笑)。


19.Kf8...24.Ka7...27.Ka4

           (27手目の局面)

123-3 上田吉一


 更に盤面を半周して、やっとa4に戻ってきたK。ここから軽い趣向手順によって順次(0,0)-Leaperを縦に送っていく。

28.Kxa3(Lpa4) 29.Kb4 30.Ka5

           (30手目の局面)

123-4 上田吉一

 3手かけると、(0,0)-Leaperが一桝上がる。後はこれを繰り返すだけだ。

31.Kxa4(Lpa5)...38.Kb7 39.Ka8 40.Kxa7(Lpa8)

           (40手目の局面)

123-5 上田吉一

 続けて(0,0)-Leaperを横に送りたいのだが、その為にはh7のLocustが邪魔。よって、今度は前とは逆回転に盤面の縁を辿り、もう一度Locustをg8に戻すことにする。

41.Kb8...46.Kg8 47.Kxh7(Lg8) 48.Kh6...58.Kb1 59.Kxa2(Lb1) 60.Ka3...65.Kb8 66.Kxa8(Lpb8)

           (66手目の局面)

123-6 上田吉一

 Locustがg8に移動したので、67.Kb7が可能となる。ここから再び、(0,0)-Leaperを横に移動させる趣向手順が始まる。

67.Kb7...77.Kf8 78.Kxe8(Lpf8)

           (78手目の局面)

123-7 上田吉一

 とうとう(0,0)-Leaperをf8まで引っ張り出すことに成功した。後はg8のLocustをh8に持っていけばゴールが見えてくる。という訳で、またまたKは盤面の縁を反時計回りに移動する。

79.Kd8... 87.Ka2 88.Kxb1(La2) 89.Kc1...99.Kh7 100.Kh8 101.Kxg8(Lh8)

           (101手目の局面)

123-8 上田吉一


 (0,0)-Leaperがf8を埋めてくれているのでKがh8からLocustを取る手が成立し(f8が空いていると、これがillegal)、これで当初の目的が達せされた。後は簡単な収束が待っている。

102.Kxf8(Lpg8) 103.Ke7 104.Kxd6(RLe7)&Lxe5(Lph8)#

           (詰上がり図)

123-9 上田吉一


作者-Kの回転移動をA、Lpの移動をBとすれば、作意はA+B+A'+B+Aの構成になっています。還元玉。
 
 各fairy pieceの特性を知り尽くした作者による、黒Kを使った知恵の輪。まるでそれぞれの駒が互いに戯れているような手順は、上田氏ならではといえよう。
(平成25年2月27日記)

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