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温故知新(詰パラ240号)

 今日はパラ240号(昭和51年1月号)を読んでみた。まず最初に目を引くのが、川崎弘氏の「形の理論」という論文。これは「詰将棋にとって好形とは何か」という非常に感覚的な問題を分析しようとした、殆ど無謀ともいえる取り組みである。
 しかもその取り組み方が半端ではない。「好形」というものを定量的に扱えないか、そう考えた氏は手数と駒数の一覧表を算盤片手に作成してみせる。集計した作品の数は何と三千局以上!無論このような問に簡単に答えが出せる筈もなく、氏もむしろ問題提起の心算で書かれたものだろうが、それにしてもこの情熱には圧倒されてしまう他無い。
 この稿の終わりには、氏が「現存する詰将棋作品全部をコンピュータに保存して、人類共通の財産として後人に伝えよう」と提唱している旨主幹の方から紹介されているが、これが後のデータベースとして結実する訳だ。今から40年以上も前からこういった取り組みを地道に進めてきた川崎氏に、改めて敬意を表したい。

 それから新年号ということで、創棋会有志による「PARADISE」のあぶり出しが載っている(タイトルには大きな字で「祝新年おめでとう 詰将棋パラダス」と書いてあって、脱力させられるが)。
 これには森田氏の「S」も含まれていて、他の作家には悪いが、1作だけ全くレベルの違う作品が混じっているという風に見える。お屠蘇気分で解こうとして無解者が続出したというのも当然だろう。これは学校で勝負すべき作品だったのではないだろうか。この年の看寿賞中篇賞は「該当作なし」だったのだが、何でこの傑作が取れなかったのかなあ?

           森田正司

2 森田正司「S」

          (詰パラ 昭和51年1月号)

65銀、同と、57金、55玉、45飛、同玉、36金、55玉、56香、同と、
75飛成、65金、同龍、同玉、75金、55玉、54銀成、同玉、64金、55玉、 67桂、同と、46金寄迄23手詰。

           (詰め上がり)

2-1 森田正司「S」詰め上がり

 サロンには、向井純氏が伊藤正氏と共同研究で「新扇詰」を解いたといって、その手順を載せている。主幹の「一番槍で呈賞」というコメントを見ると、パラ誌上で「新扇詰」が再出題でもされたのであろうか?

 また、加藤氏の巨編「寿限無」の結果稿も載っている。ここを訪れるようなマニアの方々は先刻ご承知だとは思うが、総手数19447手の超長編バカ詰である。正解者は23名。作品の特殊性を考慮すると、かなり多いという気がする。

 あとがきには「いよいよ本誌も次号(2月号)から値上げの予定」とある。郵便料金が値上げされる為のようだ。といっても、この時のパラは250円。安いねえ!

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