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チェスプロブレム世界大会参加記(2012年)その2

 会場に戻ったのは恐らく7時ごろ。レクチャーの時間が近づくにつれ、会場に日本人が増えてくる(多分最終的には半分以上日本人だったと思うが、この大会の参加者の比率からいえばこれは異様に高い数値だ)。みんな、これが歴史的なレクチャーになることを知っているのだ。

(レクチャー前の会場の様子) 

世界大会1

これがあの相馬慎一だ! 

世界大会2


左から若島先生、斎藤先生、吉井さん、犬田、角さん。 

世界大会3


小泉さんと菊田さん。

 前半は橋本さんによる自作プルーフゲームを題材にした話、後半は上田さんの典型的なフェアリー作品を3題紹介して、それがどのように着想されたのかについての話だった。具体的な話の中身は割愛するが、一つだけ面白かった出来事を。上田さんが「11枚のneutral lionを置いて=1の局面を作れ」という問題の解説をしていた時だ。確か上田さんは「白キングの置き場所が3ヶ所あるが、このうちここはこのラインの対称性からダメで…」とか言ったのだが、それを聞いた若島さんが思わず“Uh, I can't explain, because I can't understand what he says...”とこぼし、観客一同大爆笑というシーンがあった。若島さんにも分からないことがあるんだねえ。(恐らく上田さんは「もし白Kをh1に置くと、a8-h1の対角線を対称軸とする別解が生じる」と言いたかったのだろう)

(レクチャーの様子) 

世界大会4


プルーフゲームについてレクチャーする橋本さん。 

世界大会5


これが第53番の最初の妄想図なんだそうだ。 

世界大会6


レクチャーする師匠。

世界大会7


これが例の図面。

 それはともかく、どちらのレクチャーもその根っこの部分に詰将棋があることに触れていたのが印象的だった。だが、若島さんが懸命に同時通訳してはいたものの、この感性のコアの部分、日本人作家が最も大事にしている部分が外人の方にこんな短いレクチャーで伝わった筈もなかろう。上田さんが、そして橋本さんが血の滲むような努力の果てにプロブレムをものにし、新しい世界を作り上げていったように、欧米の作家の中に本気で詰将棋に取り組む者が現れるかどうか。これはヨーロッパの若いプロブレミストたちの課題であろう。

 レクチャーが2つとも終わったのは9時半ごろ。それからもしばらく参加者たちは会場に残って色々と話をしている。さて、ここから今回最大のミッション「Mr.Caillaudに挨拶しよう」のスタートだ。どう頑張っても会話はできそうにないので、小林さんに通訳を頼んで、決死の覚悟で“Nice to meet you! My name is Ken Kousaka.”と話しかけ、続いて名刺を渡す。すると驚いたことに、彼は私の名刺を見て「ああ、この作品は知っているよ」と言った(らしい)。余りに予想外の出来事に、頭がくらくらする。本当なら光栄なことだし、ウソだとしてもあたしゃ嬉しいよ(←まる子風)。その後、小林さんに写真を撮ってもらい、握手も2、3回しただろうか。もう緊張しすぎてよく覚えていない。 

世界大会8


緊張しすぎて、笑いつつも顔が引きつっているようだ。 

世界大会9


これのみ公式サイトからの貰い物。いやー、もう死んでもいいです。
有難う、小林さん!

 結局、名刺を渡した外人さんは彼一人。もっとも、最初から彼に渡すのが目的で作ったのだから、全然問題ない。小林さんはその後も「何故、作品集を作らないのか?」とか、色々話されていたが、私はその間、ただoriental smileを浮かべていただけだった。今思えば「このことについて言えば良かった」とか「こういう質問をすればよかった」とか考えが浮かぶのだが…。まさに「下種の後知恵」そのものだ。
 まあこんな感じで、とにもかくにも私の極私的なミッションは小林さんのお蔭で無事終了したのだった。

 こうなればもう後は飲むしかないでしょ。ということで、みんなで夜の街に繰り出す。メンバー的には、全国大会の「この詰」打ち上げと殆ど一緒か。普通の詰キストなら裸足で逃げ出したくなるような、何ともマニア度の高い面子が揃っている。勿論話の中身も、活字にできないような内容のオンパレード。こうして、日本を代表するプロブレミストたちのbanquetは2時ごろまで続いたのであった。 

世界大会10


上田、小林、角、橋本の各氏。背中はイノテツさん。 

世界大会11


小泉、相馬、犬田の各氏。よく見ると全員橋本Tシャツを着ています。 

世界大会12


今回の首謀者と実行犯(笑)。 

世界大会13


この日も上田節は絶好調でした。 

世界大会14


レクチャーも終えてご機嫌の橋本さん。このあとイノテツさんが散々絡まれてました(笑)。 

世界大会15


最後は寝落ちした犬田。ダメじゃん。

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