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JOSIF KRICHELI傑作選(14)

 KRICHELIが手掛けたフェアリー駒とそのジャンルは、グラスホッパー、ナイトライダー、チャイニーズピース(Rex Multiplexの6号で、第1回のW.C.C.T.で第5席となった有名なLancy themeの作品が、J.P. BOYERの手によりこれらの駒を用いて再構成されたのを思いだそう)、そしてリトラクターなど、多岐に渡っている(feenschachの読者はラッキーだ。何故なら、これらの分野を味わうことができるのだから)。しかし、この作者が特に力を入れていた2つの分野がある。

(21) Josif Kricheli (Die Schwalbe 1966, 3rd Prize)

SS#40 (8+7)

 何よりもまず、彼はプロモーションやルントラウフなどの古典的なテーマを軽い配置で表現することで、連続系のプロブレムの分野において名声を博した。1966年には、相互にラインを閉じるという、独創的なBのリレーのメカニズムを編み出した。そして恐らく(21)は、そのような原理で構成された「最長の」作品である。

1.Bg3 2.Bb8 3.Ba7 4.Bc8 5.Ba7 6.Bd1 7.Bc2 8.Kb1 9.Kc1 10.Bd1 11.Bg4 12.Bc8 13.Ba6 14.Bb8 15.Bf4 16.Bd2 17. Kd1 18.Ke1 19.Bg4 20.Bb8 21.Ba7 22.Bc8 23.Bg4 24.Be2 25.Kf1 26.Kg2 27.Bg4 28.Bc8 29.Ba6 30.Bb8 31.Bf4 32.Be3 33.Kf3 34 .Kg4 35.Bf4 36.Bb8 37.Ba7 38.Bc8 39.Bf5 40.Be4+ Qxe4#

この長い作意順の中で、それぞれの駒があたかも踊っているようではないか!

(22) Josif Kricheli (feenschach 1969, 1st Prize)

#2 (8+7) Transmuted Kings

 最後に紹介する(22)は、沢山作られたTransmuted Kingsのうちの一つである。このルールでは、チェックをかけられたKはチェックをかけた駒と同じ利きを持つ(例えば、Rex Multiplexの20号でのJ. ZELLERによるジャッジ、特に2-3 Prizeを受賞したM.CAILLAUDとD.BLONDELの#2を見て欲しい。これは(22)と同様4種成を表現しているが、その表現方法はかなり異なる)。

 1.Se5 ??? とは指せない。何故ならそのとき黒KはSの利きとなり、逆に白Kにチェックがかかってしまうからだ。正しいキーは1.Ka6!であり(スレットは2.Se5#)、以下
1...Ke8 2.cxd8=Q#
1...Kc8 2.cxd8=R#
1...Kxe7 2.cxd8=B#
1...Ke6 2.cxd8=S#

 黒Kの応手4手に対しての、1枚のPによる同一枡での4種成。c筋のPは、これ以外にもあと2つの成を持つ。

1...Sg6 2.c8=B#
1...Bxe7 2.c8=Q#

 更に、1...Bxc7 2.Rxc7#と1...Sxe7 2.cxd8=R#という変化も付け加えておこう。効率的な配置で、豊かな内容を持った作品である。

 今は亡きこのソ連のグランドマスターの多方面にわたる才能について、読者の方々に納得して頂けたら嬉しく思う。

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