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渡邊一雄傑作選(6)

(13) 渡邊一雄 (Problem Paradise 2012)

HS#3 b)HS=3 (5+6)   Leo a2,a3; Pao h3; Vao g8

Helpself:HS#nの場合、白黒双方協力して(n-1)手でS#1の局面を作り、その後白のKを詰める手順を求める。
Leo/Pao/Vao:駒を取らないときはQ/R/Bのように動くが、駒を取るときはその線上で敵又は味方の駒を一つ飛び越えて、その先にある駒(直後でなくてよい)を取る。

a)1.LE2b3 PAxa3 2.c4 VAxb3 3.Qb1+ Kxb1#
b)1.LE3b3 VAxa2 2.c3 PAb3 3.Qc1+ Kxc1=

 渡邊氏によるChinese piecesの競演。対照性が完璧なので2解目を見つけるのには苦労しないが、解後感は抜群。

(14) 渡邊一雄 (Problem Paradise 2004)

S#21 (8+11)

1.Ba1!(2.Sb2+ Kd4 3.Sd1+ Kd3 4.Sf2+ gxf2#)1...Rxa6 2.Sb2+ Kd4 3.Sa4+ Kd3 4.Rc3+ Kd4 5.Rc8+! Kd3 6.Sb2+ Kd4 7.Sc4+ Kd3 8.Bxh8 (9.Se5+ Kd4 10.Sg4+ Kd3 11.Sf2+ gxf2#) Rh6 9.Ba1 Ra6 10.Sb2+ Kd4 11.Sa4+ Kd3 12.Rc3+ Kd4 13.Rc7! Kd3 14.Sb2+ Kd4 15.Sc4+ Kd3 16.Bg7! Rg6 17.Se5+ Kd4 18.Sxg6+ Kd3 19.Se5+ Kd4 20.Sg4+ Kd3 21.Sf2+ gxf2#

 白の狙い筋は2つ。Ba1としてSb2-Sd1-Sf2という筋と、Bh8(g7)としてSe5-Sg4-Sf2という筋だ。便宜上、これらを順にthreat1,2と呼ぶことにしよう。
 いきなりthreat2を狙って1.Bxh8とすると1...Re7とされ、以下2.Ba1としても2...Re4とBf3の利きを消されてしまう。初手はthreat1を念頭に置いたBa1が正解。これに対してはSd1の瞬間にBa1を素抜こうとするRxa6が唯一の受けで、その筋を消すべく白もSをa4に移動する。するとRc6も同様に位置変換できることが分かり、まだ全貌は掴めないまでも徐々に作者の創作意図が見えてくる。これはRBSによる知恵の輪だ!
 5手目はRc8+だが、もしRc7+?とするとどうなるだろうか。これは以下作意同様に進み、8.Bxh8としたときに8...Ra8とされ、Se5-Sg4-Sf2という狙い筋の途中でBを素抜かれてしまう。Rc8はこの筋を予め消しているのだ。これにより白はRh8の消去に成功した。
 手の込んだ駒位置変換はまだ続く。今度は一旦Ba1型に戻し、Rをc7に移動しておいて(手の意味付けはRc8と同様)16.Bg7とするのが絶妙の構想で、これに対する受けは16...Rg6よりない。しかしこの受けも18.Sg6+と素抜かれてしまい、万事休す。もはや黒の抵抗手段はなく、threat2が実現して幕となる。
 H.P. Rehmばりの構想を見事に表現しきった、渡邊氏渾身の一作。是非一度盤面に並べて鑑賞して頂きたい。

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