見出し画像

温故知新(詰パラ292号-01)

 今日は詰パラ292号(昭和55年6月号)を読んでみよう。「ズバリ放談」に目を通すと、OT松田氏の傑作「夢双凧」が話題になっている。まずはこれを引用しておこう。

           OT松田 「夢双凧」

(近代将棋 昭和55年3月号、第55期塚田賞受賞)

 21香成、同玉、
「78銀、22玉、99馬引、21玉、22歩、12玉、77銀、22玉、23歩、
 21玉、 98馬右、12玉、22歩成、同玉、76銀、21玉、22歩、12玉、
 89馬寄、22玉、23歩、21玉」
「67銀、12玉、22歩成、同玉、99馬引…66銀…65銀…」
「56銀…55銀…54銀…」
 45銀、12玉、22歩成、同玉、99馬引、21玉、22歩、12玉、
 36銀、23歩、同金、同銀、同馬、同玉、35桂、13玉、14歩、同玉、
 25銀打、13玉、14歩、12玉、89馬、22玉、13歩成、21玉、12馬、
 同歩、22歩、11玉、23桂迄103手詰。

「三段銀鋸+馬位置変換」の大作。それを成立させているのが打歩詰という奥深いルールだ。例えば4手目12玉なら13歩、22玉、99馬寄以下、また6手目12玉も13歩、21玉、98馬右以下、いずれも簡単に詰む。逆に3手目86銀だと22玉で、以下どのように王手しても打歩詰から逃れられない。77銀、76銀と馬の利きを遮断して銀鋸が成立するのも同様の理由で、こうしてみるとこの巧妙な趣向が「13歩が打てるかどうか」の攻防として表現されていることがはっきり分かる。

しかし、柿木を使って変化調べをしていたところ、致命的な欠陥を発見! 42手目に77歩中合をすると、以下同馬、21玉でどうやっても詰まない。(22歩、12玉、67馬、23歩、13歩、22玉、66馬、21玉で逃れ。銀が76にあれば、このあと65馬とできる)

           (42手目77歩の局面)

最初のサイクルでは77歩中合をしても詰むため、見落としてしまったらしい。趣向手順というのはつい各サイクルで全く同様に変化・紛れが成立していると思いがちなので、この見落としも致し方ないという気がする。ただ、余詰ならともかく不詰というのは余りに痛い。この指摘が正しければ「夢双凧」は不詰作ということになるが、果たして作者はこの事にお気付きだったのだろうか?或いはこの順は、もう既にマニアの間では知られたものなのだろうか?この件について何かご存知の方は、コメント欄へ書き込みをお願いします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?