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温故知新(詰パラ284号)

 今日は詰パラ284号(昭和54年10月号)を読んでみよう。まずは表紙の有吉弘敏氏の言葉から。

(前略)
僕の好きなタイプは好形で理知的な構想作。上田吉一、若島正氏などは、僕にとって神様的存在です。
反対に嫌いなタイプは長手数の普通作や、上部脱出作と称して好手のない作などです。特に異常感覚派と呼ばれる人達の作品は見るのもイヤ、解答もCしかつけない。詰棋の重要な部分を欠いているように思います。
 また作家の態度として、落とし穴を作り引っかかると喜ぶというのも嫌です。詰棋は手順で見せるものと思います。

 作者の純粋さ、そして詰将棋に対するひたむきさが伝わってきて、読んでいて思わず「そうそう」と頷きたくなる一文である。

 続いて「ズバリ放談」を読むと、当時発表された短編の話題作が載っている。まずは林 隆司氏の作品から。

           林 隆司

58 林 隆司

          (将棋世界 昭和54年2月号)

39角、同金、27金打、18玉、19金、同玉、38金、29玉、28金引、19玉、 17金、29玉、28金、19玉、18金引迄15手詰。

これを見て、例の伊藤氏の作品を思い出さない人はいないだろう。

           伊藤 果

58-a 伊藤 果

(詰パラ 昭和56年4月号)

28金、19玉、38金、29玉、28金打、19玉、17金、29玉、28金、19玉、
18金寄、29玉、19金、38玉、28金迄15手詰。

 今までこの筋は伊藤氏がオリジナルだとばかり思っていたが、発表年月日から考えると、伊藤氏の作品は林氏のアレンジとみなすべきなのだろう。
 尚、初形の玉位置は18ではなく29にすべきだと思う。(例えば、序の4手が純粋な金の位置変更になるし、玉が29⇔19と往復を繰り返す方が、一度だけ18→19という経路を混ぜるよりずっと良い)

 もう1作、こちらは岡田敏氏の作品。

           岡田 敏

59 岡田 敏

          (近代将棋 昭和54年7月号)

44桂、同銀、24桂、同馬、43金、41玉、51飛、同馬、23角成、31玉、
32馬迄11手詰。

 この作品については、44桂、同銀、24桂、同馬というイントロに「打歩詰に関係なく、わざと玉方の馬の利きを通す捨駒」だという大袈裟な解説がついているが、この4手に特に不利感があるようにも思えない。ごく普通に「馬のスイッチバックが入った岡田流の軽快短編」と捉えるべきではないだろうか。
 むしろ、その筋の一号局として引用されている柏川氏の作品の方が、ずっとインパクトがある。

           柏川悦夫

59-a 柏川悦夫

          (詰パラ 昭和27年1月号)

74桂、同歩、61角成、62角、72金、92玉、93歩、同玉、85桂、92玉、
84桂、同角、93歩、同角、同桂成、同玉、71角、84玉、62馬、73香、
同馬、同銀、85香まで23手詰。

 まとめ方に時代を感じるものの、実戦形でこんなことをやってのける柏川氏はやはり偉大だという他ない。

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