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M.Caillaudレトロプロブレム傑作選(45)

(45)Michel Caillaud(Thierry le Gleuher 50-JT 2010, 2nd Prize)

Proof Game in 20.0 moves (0+15)  Kriegspiel

 Kriegspielというのは、所謂衝立将棋のようなもので「敵の駒配置が全く見えない」という設定のこと。こんなルールの下でも完全限定のプルーフゲームが作れるというから驚きである。では早速、局面を分析してみることにしよう。

 黒のなくなった駒はS1枚のみ。また、黒側の駒取りはPa6で1枚、Pb5で2枚、Pe6で1枚、更にf,g筋でもPによる駒取りが1枚ずつあるので、最低でも6枚ある。実際に手数計算をしてみると、
(1)Pg4はg筋の黒Pが直進したものであること(Bh5の軌跡に干渉しないため)
(2)従ってPf5はh7xg6xf5と2枚駒取りをしていること
(3)黒はキャスリングをしており、その後黒Rはf8-f3-a3と動いたこと
などが分かってくる。更に、これらの盤面配置を作るためにかかる手数は20手ちょうどなので、黒Sg8が初形位置で取られていることも判明した。

 黒の序はPg5-Bh6しかなく、白は3手目に黒Pを動かすべく何か捨駒をしなければならない。よく考えてみれば、これがc6への捨駒だということが分かるだろう。c筋のPを突いていく手も考えられるが、正解はPe4と指してからBf1-b5-c6というものだ。1.e4 g5 2.Bb5 Bh6 3.Bc6 dxc6と進んで以下の図になる。

           (図1)

 ここから白はQを使って黒Sg8を取りに行くのだが、このままではQで黒Sを取った瞬間、黒Kにチェックがかかってしまう。従って、白は何かf8に遮蔽駒を入れる必要があるが、これはBが一番自然であり、Pb4と突いてからBc1-b2-g7-f8と動かす順が見えてくる。
 一方黒はBc8が動けるようになったので、後続の黒の手はBc8-g4-h5そしてPg4というものになる。これが白Qを最短でg8へ運ぶQd1-h5-g6という手順とぴったり噛み合うことで、作意に入ったという手応えが感じられるだろう。図1以降の手順は以下のようになる。
4.Qh5 Bg4 5.Qg6 Bh5 6.b4 g4 7.b5 cxb5 8.Bb2 Sc6 9.Bg7 Qd4 10.Bf8 Rd8

           (図2)

 ここまで来れば、あとは黒Sg8を取る為に侵入した白Q/Bをそれぞれg6/g7に捨て、e6へ白Pを捨てることでキャスリングした黒Rをa3に迄運ぶお膳立てをするという展開が容易に思い浮かぶ筈だ。11.0手目以降の手順は以下のようになる。
11.Qxg8 Rd5 12.Qg6 hxg6 13.Bg7 Qxg7 14.e5 0-0 15.e6 fxe6 16.a4 Rf3 17.a5 Ra3 18.a6 Be3 19.f4 bxa6 20.f5 gxf5

           (最終局面)

 この条件でプルーフゲームを作ること自体かなり困難に思われるのだが、「BによるshieldingによりQで駒取りをし、その後2枚とも消し去る」という手順を、見えない白駒を使って表現している。しかも、明晰なロジックに基づいているので、解後感は非常によい。流石はCaillaudだと言わざるを得ない。

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