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JOSIF KRICHELI傑作選(8)

(10) Josif Kricheli (Probleemblad 1974, 2nd Prize)

#6 (10+11)

 この一連の長手数作品の紹介を、KRICHELIにとっては比較的珍しい「古典的な」テーマ(グリムショウ)を持つ作品で締めようと思う。だがこの作品は、彼の巨大な才能の多様性を証明している。確かに(7)と同様のバッテリーが使用されているように見えるが、表現されているものは全く異なる。

 1.Qxa3? (スレットは2.Qh3#) に対しては1...Rc3!/Bf3!という2つの受けがある。黒のラインピースは2枚重なっているので、白Qはこれを取ることができない(もし1...Bxg2? なら、2.Bd5+ Kh7 3.Qg3 Bf3 4.Qxf3 Rc3 5.Qh1+ Kh3 6.Qxh3#で詰)。
 キーは1.Qa6!! で、これは複数のスレットを持つが、一番分かりやすいのは2.Bf7+ Kh7 3.Q/Bxg6#というものだ。この白Qの利きを止める為に、c6でグリムショウが起こる:1...Rc6 2.Bc4+ (予め黒Rの利きを止めておく) 2...Kh7 3.Qxa3! とすれば、3...Rc3!/Bf3という受けの手はいずれも存在しない。しかし黒は、3...Ra6!という新しく生じた受けの手によって、黒Bb7の利きが止められた穴埋めをする(Dresden theme)。しかし、その受けも不十分なものでしかないことが、4.Bg8+ Kh8 5.Ba2+ Kh7 6.Qh3# という手順により判明する。白Bは2つの異なる列で黒Rの利きを遮断している。
1...Bc6の場合は2.Bd5+ (予め黒Bの利きを止めておく) 2...Kh7 3.Qxa3! と進むと、やはり3...Rc3!/Bf3という受けは消えてしまい、代わりに3...Bd7!という新たな受けが生じている (Dresden):以下4.Bg8+ Kh8 5.Be6+ Kh7 6.Qh3#までの詰。白Bは2つの異なる列で黒Bの利きを遮断している。
黒R/BのODTを持つ、優れた構図だ。これ以外の受けはいずれも早詰がある(1...Bxa6は 2.Be6+ Kh7 3.Rf4 Qf3(Qe4) 4.gxf3 (Rxe4) --- 5.Rh4#まで。また1...e6は2.Bxe6+ Kh7 3.Bg8+ Kh8 4.Bf7+ Kh7 5.Qxg6#まで、1...Be4は2.Qe6 Rc3 3.Bh7+ Kxh7 4.Qg8#までの詰)。

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