taskとtheme

 去年の全国大会の2次会でのことだ。私は「この詰」の編集スタッフの打ち上げに参加したのだが、そこにSさん(曲詰と煙詰で有名な大家)も加わり、やがて彼は煙詰について熱く語りだした。「添川さんの煙の中で、どれが一番好き?」と聞かれたので「『サーカス』です」と答えると、彼は「分かっちゃいないな」という顔をしながら「添川作品の中で一番優れているのはXXなんだよ」と教えてくれたのだった。ちなみに、XXが何だったかはもう思い出せない。何しろ、既に相当量飲んでいたので。
 そんなやり取りがあり、しばらくして若島さんの近くに行くと、若島さんに突然「高坂君、煙詰ってどこが面白いの?」と質問された。若島さんの言わんとすることはすぐ分かったが、何故よりによって私にそんなことを訊いたのだろう。もしかして私は試されていたのだろうか?(勿論、そうなのだろう)
 とっさに「何言ってんですか、若島先生。あなただって煙詰を何作も作っているじゃないですか」とか返したような気がするが、これで若島先生の抜き打ち口頭試問をパスした自信は全然ない(いや、絶対不合格だ)。でも、煙詰を一切作らなかった上田さんのような人が言うならともかく、若島さんがそういうことを言うのは一寸ズルいのではないだろうかと、今でも思っている(笑)。

 そういえば、その前の「この詰」スタッフの打ち合わせでは、こういうことがあった。やはり2次会の席だったが、橋本氏からプルーフゲームについて色々と教育的指導を受けていた時のことだ。「君は私の作品の中でどれが一番好きかね?」と聞かれて、「そうですね、あのValladao taskのやつなんか、非常に良くできていると思いますが」と答えたら、「あれはtaskじゃない、themeなんだ!」と怒られ、その後延々とtaskとthemeの違いについて説教されてしまったのであった。
 まあ、気持ちは分かる。例えば、自分が構想派作家だと自負している人が「あなたは条件作が得意ですよね」と言われたら、余りいい気はしないだろう。ただ、特にプロブレムの世界において、taskとthemeの違いはそれほど大きくないような気がするのも事実だ。詰将棋の「○○図式」のような純然たる条件作というものがほぼ皆無であるプロブレムの世界において、彼らの考えるパターンプレイ等のthemeはしばしば私の眼にはtaskとしか映らない。考えれば考えるほど、これらの差は微妙なものに思えてきて仕方がない。思うに、taskはすべてthemeに成り得るし、その逆もまた真なのだ。

 ここで改めて、煙詰という詰キストにこよなく愛され続けている条件作について思い起こしてみると、この形式がまさしくtaskでありかつthemeであることに気付く。この解答だったら、若島先生から単位が頂けるだろうか?今度お会いした際には、是非再テストをお願いしたいものだ。

(平成23年12月05日記)

 追記

 これをアップして数日後、橋本氏ご本人から「あれはtaskじゃない、themeなんだ!」という発言は一寸違うという御指摘を頂いた。おそらく「Valladaoを作ったのではなくて、成駒を成った位置にスイッチバックして捨てるテーマを作ったのだ」という趣旨の発言ではなかったかとのこと。何しろこちらもかなりアルコールが入った状態での会話であり、不正確な引用となってしまったことをお詫びしたい。

 折角なので、その作品も引用しておこう。初見の方は是非、解答を見る前に自力で解いてみることをオススメしたい。

橋本 哲(Problemesis 12/1999, 2nd Prize)

橋本 哲(12.0)

           Proof Game in 12.0 moves (15+14)

1.d4 Sc6 2.d5 Sa5 3.d6 c6 4.Qd5 Qc7 5.dxc7 d6 6.Qh5 Be6 7.c8=B Bb3 8.Bh3 b6 9.g4 0-0-0 10.g5+ f5 11.gxf6+ e.p. Kb7 12.Bc8+ Rxc8


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