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私家版・近代将棋図式精選(77)

          (149)植田尚宏

149 植田尚宏

          (近代将棋 平成4年8月号)

22歩、31玉、53角、42金、21歩成、同玉、43角成、32金、22金、同玉、
34桂、21玉、32馬、同玉、42金、21玉、31金、同飛、22歩、32玉、
42角成迄21手詰。

 いかにも手を付けてみたくなる初形から、一寸した構想が現れる。22歩-53角は他に手もないところだが、以下何を合駒しても21歩成-43角成で簡単に詰むように見える。しかし53角に対しては42金合とし、更に43角成に対して32金と移動合するのが絶妙の受け。即ち、この金合は「打歩詰誘致のための金合」なのだ。その後の纏め方も自然で美しい。

          (150)関 半治

150 関 半治

          (近代将棋 平成4年10月号)
           第80期塚田賞中編賞

28香、イ27桂、同香、ロ26桂、A同香、ハ25桂、同香、ニ24桂、
33馬、14玉、17龍、16歩、26桂、15玉、24馬、同銀、27桂、
25玉、37桂、36玉、28桂迄21手詰。

イ24歩(香、桂)は33龍、14玉、41馬以下。
イ24銀打(金)は同香、同飛、41馬以下。
イ25合は33龍、14玉、41馬、15玉、14合、同馬以下。
イ26歩(香、桂)は33馬、14玉、15馬、同玉、26龍以下。
イ26銀(金)は同香以下。
イ27歩は同香で
 a25合なら33龍以下。
 b26合なら33馬以下。
ロ26歩は33馬、14玉、15馬以下。
A33馬は14玉、15馬、同玉、26馬、14玉、23龍、15玉、13龍、14合で逃れ。
ハ24歩は15桂、14玉、41馬、15玉、17龍以下。
ハ25銀は同香、同角、33馬以下。
ニ24歩は33馬、14玉、17龍、
15合、26桂、25玉、37桂以下。

 28香以降の攻方の後続手段はおおまかに言うと(1)33龍-41馬-13龍…(2)33馬-15馬…の2パターンがある。これをいかに掻い潜って延命するか、これが玉方に突きつけられた焦眉の課題である。さしあたって玉方は(1)の順を避けるために香を26まで近付ける必要があるが、(2)の順で15馬を同玉と取るためには桂合が必須。(→紛れA参照)だが、28香に対してすぐに26桂では33馬-17龍となるので一旦龍の横利きを遮る必要があり、従ってまず27桂合が入る。以上が、前半2枚の桂合の意味だ。
 ところが26桂を同香と取ると、再び龍の横利きが復活したことと持駒に桂が入った相乗効果で(3)15桂-41馬-17龍…という第3の詰め筋が出現し、これを凌ぐ為には25桂とする他ない。これも同香と取らせるとやっとこれらの筋が全部消滅するが、その代償として与えた桂によって詰められる。

 最後の団子状態の詰上がりには賛否両論あると思うが、作者としてはいかなる犠牲を払ってでも四桂連合の最短手数を達成したかったのだろう。

          (151)植田尚宏

151 植田尚宏

          (近代将棋 平成4年11月号)

13角、同玉、33飛、22玉、31飛寄成、同銀、13飛成、同玉、25桂、22玉、
33金迄11手詰。

 33に飛を据え、銀を動かした後はその飛も13に捨て去ってしまう。植田作品に共通するこのような手順の澱みのなさ、現代では不当に低く評価されがちだが、これは紛れもなく短編のエッセンスの一つである。

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