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Michel Caillaud, The chameleon composer(7)

No.9 Michel Caillaud & Uri Avner
(Nunspeet 2001 Prize, Dedicated to Dirk Borst)

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           H#2 2sols. (5+9)
           Mars Circe

1.Rc6 Bc5 2.Bxd7 Rg6#
1.Bc6 Rdd5 2.Rxf8 Bg6#

 完全な対比のODT。創作コンクールを含む会合は、合作の機会である。そして合作は、こういうことがなければ作らないであろう作品を創作する機会である。一見無秩序なシャッフルの後、すべてが所定の位置に収まる魔法の瞬間が個人創作の醍醐味だが、共作は更に楽しいものだ(おそらく、先行する「無秩序」が、完全には同じ方向を向いていない作者たちによって強調されているためだろう)。

注2 Mars Circe:駒取りを行うときは、初形位置に戻って行う(戻る位置の決め方はCirceに準じる)。取られた駒は、通常通り盤上から消える。戻る位置が他の駒によって占領されている場合は、駒取りできない。

(訳者解説)
 Mars Circeは一連のCirceルールの中でも特にcrazyなものの一つだ。ルールの定義を読んだとしても、何故この手順で詰んでいると言えるのか、そして何故この手順でなければならないのか、すぐに理解できる人は少ないのではないだろうか。そこでお節介だとは思うが、上記手順の意味を簡単に解説してみようと思う。
 まず、最初の方の作意順から。最終手でRg6としているが、このRがチェックをかけている訳ではない(何故なら、Mars Circeではその定義から、初形位置からしか駒取りが許されないからだ!)。では、どの駒がチェックをかけているかというと、それはBc5だ。これがc1に戻って黒Kh6を取れるのをチェックと考えているのだ。従って、Pf7xg6は受けにならないし、黒KでBh5を取ることもできない(前述の通り、それはルール違反になる)。
 しかし、まだ疑問がある。最終形が詰んでいることは理解できたとして、何故黒の2手目はBxd7(これはBh1が初形位置であるc8に戻って取ったもの)でなければならないのだろうか?実はこれ、白Rd7を消すという意味なのだ。つまり、もしこれ以外の手を指して最終手にRg6とすると、黒Kがe8に戻ってKxd7!とできるので逃れ!これをさせない為に、白Rを取らなければならないのだ。
 ここまで分かれば、2解目も同様に理解できる筈。対照性は完璧で、Prizeも当然の傑作である。

No.10 Michel Caillaud (Messigny 2005, 1st Prize)

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           Proof Game in 21.0 moves(15+13)

1.h4 h5 2.Rh3 Rh6 3.Rd3 Rf6 4.Rd5 Rf3 5.exf3 g5 6.Bb5 g4 7.Bc6 dxc6 8.Sc3 Qd6 9.Se2 Kd7 10.c3 Ke6 11.Qb3 Qe5 12.Kd1 Kf5 13.fxg4+ Ke4 14.Kc2 Qd4 15.Kb1 Kd3 16.Qa3 Kc4 17.gxh5 Qc5 18. d3+ Kb5 19.Bf4 Kb6 20.Bh2 Qd6 21.Sf4 Qd8

 他のジャンルからアイデアを移植した例。黒Kを守る為に黒Qが白Rの周りを一周するというのは、シリーズヘルプで良く見られる手順に触発されたものであることが明らかだ。

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