M.Caillaudレトロプロブレム傑作選(25)
(25)Michel Caillaud(Diagrammes 53 09-10/1981)
#1 (11+10)
なくなった駒は白がRBBSSの5枚で、黒はQRRBSSの6枚。また、これらの駒取りは全てPによるものだ。では、白がキャスリング可能だと仮定して、矛盾を導こう。
白Pe3,f4、黒Pe6,f5はいずれも駒取りせずに直進している。白黒双方とも、これらを1枚でも戻そうとすると、前もってRやBを初形位置に戻しておかなければならない。では、白Pで黒Rをuncaptureして、これをh8に戻すことは可能だろうか?
ここで気付いておきたいのは、双方の駒取りが全てKe1-Pd2-Pf4-Pf5-Bc8を結ぶラインの左の領域で起こっているという事実だ。つまり、どちらの駒の取りを戻すにせよ、その駒をこのラインより右に移動させるには、これらのラインを構成するPを戻す必要があるのだ。
例えば、黒Rをuncaptureしてh8に戻すことを考えてみよう。先に述べたように、そうする為にはd2からd7まで続くPのラインの網を壊さなくてはならない。ところが、Pe7-e6と戻すのはBf8が原型位置で取られたことになり矛盾。また、Pf6-f5とすると、黒Rはh8に戻れなってしまう。従って、戻すとすれば白Pである。しかし、白も同様にRをh1に戻す必要があり、黒と同じ理由で白Pはどれも戻すことができない。つまり、白がキャスリング可能だとすると、出題図は不可能局面である。
以上より、作意は1.Kf2#(1.0-0-0#? but illegal)ということになる。
実は本作には、元ネタがある。それが以下の図だ。
(25-a) Niels Høeg (Aarsskrift DSK 1939)
黒駒を1枚追加し、黒が1手戻して、それからH#1にせよ(12+12)
Add bRd2 & -1.Rd1xQd2 then 1.Kg7 Qh6#
読者の皆さんは、是非この作意の意味を分析して「ある領域内に特定の駒を封じ込める」という意味付けをCaillaudが純粋に抽出していることをご確認下さい。
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