私家版・近代将棋図式精選（105）

　　　　　　　　　　　(220)添川公司「早春譜」

　　　　　　　　　　（近代将棋　平成15年8月号）
　　　　　　　　　　　第96期塚田賞、第42期看寿賞

18と、同玉、28と引、19玉、18と、同玉、36馬、29玉、28と、同玉、
38金、29玉、28金、同玉、48飛、39玉、49飛、同玉、27馬、58玉、
57と、69玉、36馬、68玉、58馬、79玉、89金、同玉、99金、78玉、
77と、79玉、89金、同玉、67馬、98玉、97と、同玉、87と、同玉、
77馬、97玉、88馬、96玉、86と、同玉、75角、同玉、66と、86玉、
76と、95玉、77馬、94玉、85と、93玉、92桂成、同玉、83銀成、
同玉、74銀、92玉、83銀成、同玉、84と、92玉、93と、同玉、66馬、
91と、同玉、81歩成、同玉、71歩成、91玉、81と、同玉、71と、
91玉、81と、同玉、41飛成、71歩、同龍、同玉、93馬、61玉、
83馬、51玉、62銀成、同玉、63歩成、51玉、73馬、41玉、52と、
同玉、53と、同玉、54歩、52玉、53歩成、同玉、54と、52玉、
63と、41玉、42歩、同玉、54桂、41玉、41玉、52と、同玉、62馬、
41玉、42桂成、同玉、33歩成、41玉、31桂成、同玉、53馬、21玉、
43馬、11玉、22と、同玉、23歩成、同玉、33馬、12玉、13桂成、
同玉、24と、12玉、23と、21玉、22馬迄139手詰。

　これは他の添川煙にも共通する特長の一つであるが、全手順を通して展開が非常に滑らかで、ごつごつしたところが全くない。しかしこれはただの無防備煙ではなく、史上初の「馬追いでの全駒無防備煙」なのだ！ところが、これだけの難条件をこなしているのにも関わらず、氏の手にかかると全ての駒が活き活きと躍動し、そして消えていく（左下隅でのターンの、何と見事なこと！）。信じられないことだが、氏にとって条件とは創作のモチベーションにはなるが、何ら足枷にならないかのようだ。

　それにしても、添川氏の創作力もさることながら、こんな条件でさえこのような美しい作品が隠されている煙詰という様式の懐の深さには、改めて驚かざるを得ない。煙詰という条件作に、未だ無限の可能性が秘められていることを感じさせる一局。