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プロパラを振り返る(140)

 実はプロパラ61号には、Caillaudの筆による“64 Proof Games”についての書評が載っている。プルーフゲームの愛好家の目から見ると奇跡のようなコラボレーションなのだが、これに目を通された方は果たしてどれくらいいらっしゃったのだろうか?そのまま埋もれてしまうには余りにも勿体ない文章なので、以下にその翻訳(例によって下手な訳だが)を載せておこうと思う。まだ読んでいない方は是非これに目を通され、できれば合わせて“64 Proof Games”も再読されることを強くお勧めします。

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Satoshi Hashimoto, 64 Proof Games
reviewed by Michel Caillaud

 プルーフゲームの巨匠の手によるこの本は、この分野について余りよく知らない読者にとっての良質な入門書であるだけでなく、全てのプロブレム愛好家にとっての必読書である。この「64 Proof Games」には、まず最初に作品が発表年代順に解答を付けずに並べられている。私自身はその殆どすべてを雑誌掲載時に解いているのだが、読者の方々にも是非そうすることを心から勧めたい。というのは、それがこれらの作品を味わう最も良い方法であるからだ。そのようにしてみて、失望させられることはまずないであろう。この分野に関する知識がない場合には、まずこの本の末尾の若島氏の論考「プルーフゲームの解き方」を読むことから始めるとよい。

 もし読者に時間がなかったり、或いは難しすぎて解くことができない場合には、解答の付いた形で作品が掲載されたページを読むとよいだろう。私は既にこれらの作品を知っているのだが、その解説はこの作者が創作を通じて如何にして深い洞察に至ったかについての、実に魅力的な論考になっている。彼の創作姿勢は彼がまず詰将棋作家として出発したという事実に強く影響されているが、これは西欧のプロブレミストにとっては理解し難いことであろう。いずれにせよ、ある分野で培われた美意識は他の分野での創作時にも影響を与えるのだ。例えば、no.41において強調されている白と黒との「協調関係」は、Chris Feather氏がヘルプメイトで力説する「相互作用」によく似ている。(時々プルーフゲームは、ヘルプゲームと呼ばれることがある)

no.41 (StrateGems 2001)

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           Proof Game in 16.5 moves (14+15)

1.Sc3 d5 2.Se4 d4 3.Sf6+ gxf6 4.h4 Bg7 5.Rh3 Kf8 6.Re3 dxe3 7.dxe3 Qe8 8.Qd8 a5 9.Bd2 Ra6 10.Rd1 Rc6 11.Bc1 Rc5 12.Rd7 c6 13.Rc7 h6 14.Qd1 Qd8 15.Sf3 Ke8 16.Sd2 Bf8 17.Sb1

 この本の中には、敬意を表すべき多くの啓発的な観点が示されている。そのうちの一つは「ヨーロッパの流儀」、すなわち調和のとれた作品よりも様々な内容を詰め込んだ作品の方を好むという我々の志向についてのものである。実際、私もまたヨーロッパの作家であるが、この見解を支持したいと思う。プロブレムの作品が技術(パフォーマンス)と芸術(調和)の融合ならば、橋本氏は紛れもなく芸術側に重きを置くタイプの作家だ。

no.45 (Gianni Donati 50 JT 2002-03)

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           Proof Game in 16.0 moves(14+15)

1.a4 h5 2.a5 Rh6 3.a6 Rf6 4.Ra5 Rf4 5.Rf5 g6 6.Rf6 exf6 7.b4 Bc5 8.b5 d6 9.b6 Sd7 10.bxa7 Rb8 11.a8=S Sf8 12.a7 Kd7 13.Sb6+ Kc6 14.a8=R Kb5 15.Ra1 c6 16.Sa8 Rxa8

no.48 (Problemesis 2003)

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           Proof Game in 20.0 moves(14+14)

1.c3 h5 2.Qa4 Sh6 3.Qc6 bxc6 4.g4 Bb7 5.g5 Qc8 6.g6 Kd8 7.gxf7 g6 8.d4 Bg7 9.Sd2 Re8 10.f8=R a6 11.Rf6 Rh8 12.Sb3 Sg8 13.Bh6 Ke8 14.e3 Qd8 15.Bxa6 Bc8 16.Bb7 Rxa2 17.0-0-0 Ra8 18.Kb1 Sa6 19.Ka1 Bf8 20.Rb1 Sb8+

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