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チェスプロブレムの世界(5-2)門脇芳雄

◎Zagoruykoのテーマ(Zagoruykoはロシアの作家)

 紛れの構成をZagoruykoはさらに本格的にした。2通り以上の受け方の応手に対し、本手順と2種類以上の紛れ手順(紛れの一つはSetであっても良い)の中でそれぞれ違う詰め方が成立するように構成するのを「Zagoruykoのテーマ」と云う。

(C)Leopold Szwedowski (Il due Mosse 1960, 1st Prize)

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           #2 (9+13)

Try
1.Sd6?(2.Qd4#)
1...Se6/Se2/xg4 2.Qxf5/Qf3/Qe4# but 1...c5!
1.Sxf6?(2.Qd4#)
1...Se6/Se2/xg4 2.Sg5/Rf2/Rxg4# but 1...Sf3!

1.Sg5!(2.Qd4#)
1...Se6/Se2/xg4 2.Sxe6/Sh3/Re4#

(C)題は「Zagoruykoのテーマ」を描いた作品である。
本題の紛れ2通りと本手順は、何れも2.Qd4までが狙い。これに対し①Se6,②Se2,③Pxg4が有力な受け方だが、紛れと本手順でそれぞれ違う詰め方が成立する。「紛れの変換」は、最初は解答者を幻惑するのが狙いだったが、この作品などは難易よりも構成の美しさの表現が作者の狙いとなっている。

(D)Valentin F. Rudenko (1962, 1st Prize)

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           #2 (8+7)

Set
1...Rxd5/Sxd5 2.Qc2/Bxf5#

Try
1.Se6? (2.Rd4#)
1...Rxd5/Sxd5 2.Seg5/Sxc5# but 1...f4!
1.Sxf5? (2.Rd4#)
1...Rxd5/Sxd5 2.Qxe3/Sd6# but 1...Sd7!

1.Sc6!(2.Rd4#)
1...Rxd5/Sxd5/Kxd5/Rc4 2.Sg5/Sd2/Qd3/Re5#

 こう云うことをやり出したら、どこまでもトコトンやるのがチェスプロブレムの作家である。(D)題の作者はSetと紛れと本手順で合計4通りの「Zagoruykoのテーマ」を画いたばかりか、その変換手順で何れもSelf-block(守備方が自分で自分の逃げ道を塞いでしまうテーマ)を画いてみせた。
 本題で、受け方の防手①Rxd5と②Sxd5が有力な受け手だが、詰め方の最終手は何れもこの防手を邪魔駒の悪手とさせる興味深いテーマで、しかも同時に紛れと本手順とSetの中で創作の至難なZagoruykoを表現しているのである。

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