リトラクター入門(2-1)
(4) J.Furman (Memorial Onitiu 1974, 3rd Prize)
白が1手戻して、黒のキャスリングを不可能にせよ (14+13)
(4)は最近の作品であるが、作者は余り一般的ではない条件をためらうことなく使っている。相手のキャスリングを阻むための手を指すというプロブレムは、オーソドックスの#2あるいは#nでよく見られるが、これはレトロ解析によって黒がキャスリングの権利を持たない事実を証明した後で、黒Kを詰めるというものだ。だが、本作における分析はもう少し緻密である。
黒による駒取りはb6xSc5とc6cBb5であり、白はa5xb6とg5xf6、それにh筋の黒Pを取っている。また、g筋の黒Pはg1で成っている。白が1.0-0と戻した後、a5xb6として左上の膠着状態を解きほぐすのには、以下の2通りの手順が可能である。
a) 黒Bをg1でunpromotionし、a1で成った黒駒を白Pがf6で取る
1.0-0 2.Bd4-e5 h5-h6 3.Bg1-d4 h4-h5 4.g2-g1=B h3-h4 5.g3-g2 h2-h3 6.g4-g3 f3-f4 7.g5-g4 f2-f3 8.g6-g5 g5xQf6 (g5xSf6?とすると、白が手詰まりになる) 9.Qd4-f6 e5-e6 10.Qa4-d4 e4-e5 11.Bd1-b3 e3-e4 12.Qa1-a4 e2-e3 13.a2-a1=Q g4-g5 14.a3-a2 g3-g4 15.a4-a3 d4-d5 16.a5-a4 d3-d4 17.a6-a5 a5xBb6
b) 黒Rh8をa1でunpromotionする
1.0-0 2.Rg8-h8 h5-h6 3.Rg3-g8 h4-h5 4.Bd1-b3 h3-h4 5.Ra3-g3 h2-h3 6.Ra1-a3 f3-f4 7.a2-a1=R f2-f3 8.a3-a2 d4-d5 9.a4-a3 d3-d4 10.Bg3-e5 e5-e6 11.a5-a4 e4-e5 12.a6-a5 a5xSb6! (a5xQb6?とすると、黒Qがa5にいるときのチェックを白は防げない) このときa8,b6,c8にいる3枚の黒Sのうち一枚は、g筋で成ったものである。
a)ではa1=Q, g1=B、そしてb)ではa1=R, g1=Sと、2種類の逆算によりAUWが表現されている。このいずれの場合も、黒Rh8は動かなくてはならず、従って白の1.0-0の後では黒の1...0-0はillgalとなる。
(B)協力的リトラクター
このタイプのプロブレムは、複雑な解析に飽きた解答者に向いている。双方が協力するので、非常に軽い配置が可能となる。
(5) J.Sunyer (Chess Amateur 1926)
双方1手ずつ戻し、それからH#1にせよ (1+1)
(5)は古典的な作品である。1.Kg6xRh5 Rh8xQh5 と戻してから1.0-0 Qh7#とすればよい。
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