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プロパラを振り返る(153)

 今回は、René Millour氏の作品集“Subtleties on 64 Aquares : Some Chess Problems”に収められた1作を、若島さんの解説でお届けします。

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René Millour (Quartz 2005-6 1st Prize)

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           SH#7 K-Madrasi (1+2)
           Imitator c7
           b)Ic7→b4

 ImitatorもMillourさん愛用の条件。その中でもひときわ超傑作だと思えるのがこの作品だ。
 まず、問題図をごらんいただきたい。KどうしがMadrasiで動けない。つまり、黒が動かせるのはPa2だけだし、それを動かしているだけで、どうして黒をメイトにできるような形が現れるのか。誤図ではないかと思う解答者もいたのではないか。ところが、実はそうではない。
 信じがたいことかもしれないが、Imitatorを使うと、KどうしのMadrasiが切断できるのである。つまりこうだ。Kがお互いに取ることができないようなImitatorの位置が存在すれば、その瞬間にどちらのKも動けるようになり、Madrasi状態が解消できるのである。wKe2/bKd3の関係を念頭に置けば、そのようなImitatorの位置はa8とh1しかないが、動ける駒の位置から、それはh8のみ可能だと決定できるのだ!
 Madrasiをほどいた後のことを考えよう。最終のメイト形は、白のKからは黒のKを取れる(つまり、チェックをかけている)が、黒のKからは白のKを取れない(つまり、チェックをかけていない)ような形およびImitatorの位置を考えればよい(非対称のMadrasi!)。そのようなImitatorの位置は、明らかに盤のエッジにある。
 また、注意しなくてはならないのは、黒の成駒を動かしているとき、Imitatorはb1-h1-h7のエッジに来られないことである(そこに来ると、黒Kにselfcheckがかかってしまう!)。また、a8-g8のエッジに来ると、今度は白Kにチェックがかかるのでダメ。
 以上を頭に入れて、a)とb)でそれぞれ黒の成駒が取り得る位置を白丸で表した図が次のものである。

           cf-a)

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           cf-b)

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a)では、f3に到達するにはSしかなく、そのときの経路a1-c2-e1-f3が唯一に定まる。またb)では、g6に3手で到達するにはQしかなく、そのときの経路は白Kの位置からa1-a5-f5-g6と唯一に定まる。これをもとにして、次の解が得られる。

a)1.a1=S(Ic6) 2.Sc2(Ie7) 3.Se1(Ig6) 4.Sf2(Ih8) 5.Kc2(Ig7) 6.Se1(If5) 7.Sd3(Ie7) Kxd3(Id8)#
b)1.a1=Q(Ib3) 2.Qa5(Ib7) 3.Qf5(Ig7) 4.Qg6(Ih8) 5.Kc2(Qg7) 6.Qd6(Id7) 7.Qd1(Id2)+ Kxd1(Ic1)#

 K Madrasiをほどくという卓抜なアイデア。それがImitatorを使うと可能になるとは、誰が夢想しただろうか。twinの設定もまたすばらしい。作者の想像力と作図力には脱帽するしかない。

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