私家版・近代将棋図式精選(50)
(86)橋本孝治「イオニゼーション」
(近代将棋 昭和60年12月号)
第66期塚田賞長編賞、第24期看寿賞長編賞
94成桂、85玉、84と、75玉、74と引、66玉、56と、同玉、55と寄、66玉、
65と、同玉、67龍、66香、64と右、55玉、57龍、56歩、54と右、45玉、
47龍、46歩、44と右、35玉、37龍、36歩、34と引、25玉、27龍、26歩、
24銀成、15玉、14成銀、25玉、24と、35玉、34と左、45玉、44と左、
55玉、54と左、65玉、64と左、75玉、74と左、85玉、86歩、同飛、
84成桂、95玉、97香、96桂、同香、同飛、94成桂、85玉、84と、75玉、
74と右、65玉、64と右、55玉、54と右、45玉、44と右、35玉、34と右、
25玉、17桂、同成香、24成銀、15玉、17龍、16歩、
(74手目の局面)
まずここまでが舞台作り。66香が最善なのは手順を追えば自然と明らかになる。ここから、二段合によって香歩を香桂に変えながら龍が香に近づいていく。
「14成銀、25玉…85玉、86歩、同飛、84成桂、95玉、98香、97桂、同香、
96香、同香、94成桂、85玉…35玉、27桂、同歩成、34と右、25玉、
27龍、26歩」
「24と、35玉…95玉、98香…94成桂、85玉…45玉、37桂、同歩成、
44と右、35玉、37龍、36歩」
「34と左、45玉…95玉、98香…94成桂、85玉…55玉、47桂、同歩成、
54と右、45玉、47龍、46歩」
「44と左、55玉…95玉、98香…94成桂、85玉…65玉、57桂、同歩成、
64と右、55玉、57龍、56歩」
(218手目の局面)
ここまでくるとやっと香が入手できる。しかし、本当の趣向はここからだ。
「54と左、65玉…95玉、98香…94成桂、85玉…75玉、67桂、同香成、
74と右、65玉、67龍、66歩」
(244手目の局面)
香は入手したものの、これですぐに収束に入れる訳でもない。仕方なく同様の手順をまた繰り返すことになる。
『64と左、75玉…95玉、98香…94成桂、85玉…65玉、57桂、同歩成、
64と右、55玉、57龍、56香』
(270手目の局面)
香を入手してもすぐに玉に一枚渡すことになり、その香が次には6段目の合駒となって出現する。しかし、ここで66にあった香が56に移動したことに気付いて、趣向が見えてくる。
「54と左、65玉…95玉、98香…94成桂、85玉…75玉、67桂、同歩成、
74と右、65玉、67龍、66歩」
(296手目の局面)
香を剥がすためには龍を一旦よけなければならないから、結局3サイクルで玉方の香を1筋動かすことが出来た訳。香を移動させる意味はまだよく分からないが、16までは一直線だ。
「64と左、75玉…95玉、98香…94成桂、85玉…65玉、57桂、同香成、
64と右、55玉、57龍、56歩」
『54と左、65玉…95玉、98香…94成桂、85玉…55玉、47桂、同歩成、
54と右、45玉、47龍、46香』
「44と左、55玉…95玉、98香…94成桂、85玉…65玉、57桂、同歩成、
64と右、55玉、57龍、56歩」
「54と左、65玉…95玉、98香…94成桂、85玉…75玉、47桂、同香成、
54と右、45玉、47龍、46歩」
『44と左、55玉…95玉、98香…94成桂、85玉…45玉、37桂、同歩成、
44と右、35玉、37龍、36香』
「34と左、45玉…95玉、98香…94成桂、85玉…65玉、47桂、同歩成、
54と右、45玉、47龍、46歩」
「44と左、55玉…95玉、98香…94成桂、85玉…45玉、37桂、同香成、
44と右、35玉、37龍、36歩」
『34と左、45玉…95玉、98香…94成桂、85玉…45玉、27桂、同歩成、
34と右、25玉、27龍、26香』
「24と、55玉…95玉、98香…94成桂、85玉…65玉、37桂、同歩成、
44と右、35玉、37龍、36歩」
「34と左、45玉…95玉、98香…94成桂、85玉…35玉、27桂、同香成、
34と右、25玉、27龍、26歩」
『24と、35玉…95玉、98香…94成桂、85玉…45玉、17桂、同歩成、
24成銀、15玉、17龍、16香』
「14成銀、25玉…95玉、98香…94成桂、85玉…35玉、27桂、同歩成、
34と右、25玉、27龍、26歩」
「24と、35玉…95玉、98香…94成桂、85玉…75玉、17桂、同香成、
24成銀、15玉、17龍、イ16香」
(754手目の局面)
玉方は16の合に香を強制される。(意味付けは変化イ参照)これによって、85玉に対し75と以下で収束に入ることが出来る。では、16に香合を強制した理由はというと、変化ロにおける98香、97桂合の時に玉方の合駒をなくすためだったのだ。何という深遠な意味付けだろう!
14成銀、25玉…85玉、75と、ロ94玉、93馬、同玉、84と、92玉、
93香、同飛、同と、同玉、96香、95香、同香、同桂、94香、同玉、
84飛、93玉、82飛成、94玉、84龍迄789手詰。
・変化
イ16歩合は14成銀…84成桂、95玉、96と、同玉、97香、87玉、88香、
同銀、同と、同玉、98飛、89玉、19龍、98玉、87銀、同玉、89龍、
88合、98金、86玉、88龍迄同手数駒余り。
ロ同桂なら84成桂、95玉、96と、同玉、98香、87玉(97桂は93飛で合駒
がない!)97飛、86玉、87香、同桂成、96飛、75玉、65馬迄。
超長手数の分野に「駒位置変換」という全く新しい手法を導入した、まさしくepoch-makingな作品。3サイクルが1つのクラスタをなしていて、その度に玉方香の位置が一つずつずれていくというフェアリーテイスト溢れる趣向は、今もその輝きを失っていない。昭和の詰将棋黄金期を象徴する大傑作!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?