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L.Ceriani レトロプロブレム傑作選(35)

(35)Luigi Ceriani (La Genesi delle Posizioni 1961)

局面をほぐせ(12+15)

 なくなった駒は白がSSPPの4枚で、黒はQのみ。また白側の駒取りはPg6によるものだけで、黒側もまたb6,c6,d5,f5の4枚のPによるもので尽きている。このことから、a筋とe筋の白Pはいずれも成っていることが分かる。この成を戻さない限り、黒Pの駒取りも戻せない構造になっている。a筋での成を先に戻さないといけないことは明らかであり、その駒が白Rh4であることもすぐに分かる。では実際に戻してみよう。

1...Ba7-b8+

           (図1)

 まず初手は絶対。白Rh4の成を戻したいのに、いきなり黒Ba7によってそのラインが遮断されてしまう。従って、当面の目標は右上の駒の配置を入れ替えて黒Kf8と寄れるようにし、それによって白Kをd8に入れて白Rをa8に入れることだ。ではその線に沿って動かしてみよう。

2.Bf8-g7 Rg7-h7 3.Pg2-g3 Rh7-h6 4.Rh3-h4 Sh6-g8 5.Qg8-h8 Rh8-h7 6.Qh7-g8 Rg8-g7 7.Bg7-f8 Rf8-g8 8.Ra3-h3 Rg8-h8 9.Bh8-g7 Rg7-g8 10.R-- Rg8-f8 11.R-- Kf8-e8 12.Kd8-c7 Bb8-a7 13.Ra8-a3
 
           (図2)

*現在黒番

 黒Kを寄せる為には白Bをh8に持っていくのが必然であり、ここまでは案外すんなりと事が進む。しかし問題はここからだ。a8に入ったはよいが、すぐにまたBa7と遮断機が下りてしまう。
 いや、ここで13...Ph3-h2??と戻したら良いのではと思われるかもしれない。実際、13...Ph3-h2 14.a7-a8=R Ph4-h3 15.Pa6-a7...と進めば、一見簡単に目標を達成したように見えるだろう。ところが、これは既に不可能局面となっているのだ。つまり、この後15.Pa7xSb6 Sa4-b6と戻すと、黒はここでretro-stalemateに陥っているではないか!

           (図3)

 従って、黒は13...Ba7-b8と戻さざるを得ない。以下、14.Kc7-d8 Ke8-f8...と戻すのが必然となるが、このまま元に戻るようでは白Rの成を戻すことは不可能となる。ではどうしたらよいのだろうか?
 h筋の黒Pを使わずに白Rの成を戻すには図2の局面を白番で迎えれば良い。その為にはtempoを失う必要があるが、その機構は勿論右上にしかない。複雑怪奇なその手順をとくとご覧あれ。

13...Ba7-b8 14.Kc7-d8 Ke8-f8 15.Rb8-a8 Rf8-g8 16.Ra8-b8 Rg8-g7
17.Bg7-h8 Rh8-g8 18.Rb8-a8 Rg8-f8 19.Bf8-g7 Rg7-g8 20.Qg8-h7 Rh7-g7
21.Qg7-g8 Rg8-h8 22.Ra8-b8 Rh8-h7 23.Qh7-g7 Rg7-g8 24.Rb8-a8 Rg8-g7
25.Bg7-f8 Rf8-g8 26.Ra8-b8 Rg8-h8 27.Bh8-g7 Rg7-g8 28.Rb8-a8 Rg8-f8
29.Ra8-b8 Kf8-e8 30.Kd8-c7 Bb8-a7

           (図4)

 よくよく見れば要するにQのtriangulation(h7-g8-g7-h7)なのだが、それを行う為にh8に連れていった白Bを一旦f8へ戻し、Qがtempoを失った後、更に再度h8へ戻すという、実に回りくどい方法で実現している。このあたりの構成は詰将棋の知恵の輪趣向と全く同じだ。

           (図5)

*現在白番

 これにて漸く、黒Pを一度しか使わずに白Rの成を戻すことができ、後は当初の予定通り局面をほぐすことができる。

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