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楽しいレトロプロブレム(6)

(5) Peter Wong (The Problemist Supplement 9/1997)

Proof Game in 8.0 moves (13+14)  2sols.

 手数計算をしてみると、黒はちょうど8手。従って、白はQでPc7を取ってあげないといけません(SやBで取りに行くと、時間がかかり過ぎます)。この白Qはそのあとb6で黒Qに取られたのでしょう。そうすると白の手は、Qが3手でPが2手の計5手。残り3手はどうやって消費すればよいのでしょうか?
 一見白Kがd1-d2-e1とでも動けば(これをtriangulationと呼びます)良さそうですが、実際にはPc3で黒Bを取ったのは最短でも4手目ですから、これは不可能です。同様の理由から、白Bc1によるtempo moveも出来ません。
 種明かしをすると、奇数手を消費したのは実は取られた白S/Pなのです。如何にも初形位置で不動のまま取られたように見える駒が、実は3手かけて別な位置で取られていたのです!
ということで、作意順は以下の通り。

(1)1.a4 e5 2.a5 Bb4 3.a6 Bc3 4.dxc3 Sxa6 5.Qd6 Sb4 6.Qxc7 Sa2 7.Qb6 Qxb6 8.f3 Qxg1
(2)1.Sf3 e5 2.Sd4 Bb4 3.Sc6 Bc3 4.dxc3 Sxc6 5.Qd6 Sb4 6.Qxc7 Sxa2 7.Qb6 Qxb6 8.f3 Qg1

 奇数手かけて元に戻る以外にも、tempoの失い方は色々あるものですね。もう一作、同じ作者による似たテーマの作品を紹介しておきましょう。

(5-a) Peter Wong (U.S. Problem Bulletin 1-4/1995)

Proof Game in 11.5 moves (15+12)

こちらの作意は、1.e3 g6 2.Ba6 Bg7 3.Se2 Bc3 4. bxc3 Sh6 5.Ba3 0-0 6.Bxe7 Sxa6 7.Sa3 Sc5 8.Rb1 Se4 9.Rxb7 Sg3 10.Qb1 Sf1 11.Sg3 Qe8 12.Sxf1です。
 この作品では、黒Sb8が奇数手消費する為にf1まで移動します。「取られる駒を利用してtempoを失う」という発想が(5)と共通していますね。

(6) Joseph C. J. Wainwright (American Chess Bulletin 04/1912)

#3 (7+2)

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