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プロパラを振り返る(160)

 今日読んでいるのはプロパラ76号(October-December 2016)。この号には、恐らく私の代表作になるであろう作品が載っているので、これを紹介したいと思う。

(311)高坂 研、橋本 哲(Problem Paradise 76, 2016 1st Prize)

311 高坂 研、橋本 哲

           Proof Game in 20.5 moves(16+13)

 まずは手数計算をしてみよう。白には取られた駒はなく、黒のなくなった駒はRPPの3枚。盤面配置を作るのに白は最短で9手しかかからないが、黒は17手かかる(Bd3は2手で行けそうに見えるが、実際にはSe4より先には動けない)。また、白がf3で黒Rを取ったのは明らかで、この黒Rは3手動いている。よって、もはや黒には1手の猶予もなく、d7とg7の黒Pはいずれも初形位置で取られていることになる。
 特に黒Pd7がキーとなる駒で、これを取り除くことにより左上の黒Q,R,Bが動き出すことになる。具体的には、
(1)Sb8をc6へ
(2)Qd8とBc8を移動
(3)Pe7-e5としてからBf8-b4
(4)Ra8をb5へ
(5)Sc6-d8としてからPc7-c5
のような順になると予想される。

 次に、白Kの軌跡を考えてみることにしよう。白にはまだ12手残されているとはいえ、2枚の黒Pを取り除くにはある程度手数がかかるから、そんなに遠回りをする訳にもいかない。黒Pc7-c5の後でようやく白Kd5とできるのだから直前の位置はc4しかなく、白Kの軌跡はd1-e2-d3-c4-d5に確定する。
 すると、ここで重要なことに気付く。この白Kの軌跡に干渉しない為には、黒Bc8はc8-e6-c4-d3のようなコースを取ってはダメなのだ。唯一可能な軌跡はc8-h3-f1-d3と大回りするものであり、このことから、白Bf1は少なくとも4手動いていることになる。この白Bが4手動く間にPd7を取ってSwitchback或いはRundlaufするのでは、と想像するのはそう難しくない筈。
 そうと分かれば、白はまずPg7を除去してRh8をf3に運んでもらわなければならないから、序はほぼ絶対。

1.b3 Sf6 2.Bb2 Se4 3.Bxg7 Rg8 4.Bb2 Rg3 5.h4 Rf3 6.exf3 f6 7.Bb5 Kf7 8.Bxd7 Sc6

           (途中図1)

311-1 高坂 研、橋本 哲


 黒の8手目はSc6しかなく、これにより白Bd7は左の領域に避難することができなくなる。結局、h3に退いてからPg3として初形位置に戻り、これで最初のRundlaufが完了する。

9.Bh3 Qd6 10.Bc1 Qh2 11.g3 e5 12.Bf1

           (途中図2)

311-2 高坂 研、橋本 哲


 これだけなら、さして驚くにはあたらない。作者の主張は、この後の手順にある。前述の通り、黒Bc8はこの後h3-f1-d3と動くのだが、白Bf1はその邪魔になっているのにお気付きだろうか。その為、この白Bは更にもう一周Rundlaufすることになるのだ!12手目以降の手順は以下の通り。

12…Bh3 13.Bb5 Rd8 14.Ke2 Rd5 15.Qe1 Sd8 16.Bd7 Rb5 17.Kd3 Bb4 18.Kc4 c5 19.Kd5 Bf1 20.Bh3 Bd3 21.Bf1

 テーマは勿論白BのRundlauf2回転。これだけ軌道の大きなものは、恐らく前例がないと思う。尚、このアイデアと構図は私が思いついたものだが、なかなか旨くいかず橋本氏の手をお借りすることになった。氏には改めてここで感謝の意を表しておきたい。

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