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プロパラを振り返る(42)

 今日はプロパラ第22号を読んでみることにしたのだが、残念ながら通常出題のコーナーではめぼしい作品を発見することができず。その代り、まずは世界大会でのJapanese Sake Tourney(Portoroz 2002)での最優秀作を紹介しよう。作者はご存じCaillaud。

(94) Michel Caillaud (Portoroz 2002 Sake Tourney, 1st Prize) 

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                                         S#18 Haunted Chess (12+6)

Haunted Chess:敵の駒を取ったとき、取られた駒は「幽霊」となり、取った駒が別の場所に移動するとその場に復活する。

try:1.Qe4+ Rxe4+ but 2.Sxe4!
1.Bxc7 Rxf5 2.Ba5(+Pc7) Re5(+Qf5) 3.Bb4 Rxf5 4.Ba3 Re5(+Qf5) 5.Bc1 Rxf5 6.Bxh6 Re5(+Qf5) 7.Kg5 Rxf5+ 8.Kg6 Re5(+Qf5) 9.Qf3+ Re4 10.Bg5(+Ph6) xg5 11.Qf5+ Re5 12.Kxg5 Rxf5+ 13.Kg4(+Pg5) Re5(+Qf5) 14.Se4 Rxf5 15.Sxg5
Re5(+Qf5) 16.Kg3 Rxf5 17.Kh4 Re5(+Qf5) 18.Qe4 Rxe4#

 黒はRxf5と白Qを取れるのだが、取った後にRf6などとすると白Qがまたf5に復活する為illegal。他に指せる手もないので、黒は基本的にRを往復させることになる。その間に白はtryの筋を成立させるべく、Sをピンする為の知恵の輪的準備工作をしなければならない。
 こういうヘンテコなルールにもすぐに頭が順応するCaillaudって、本当に人間なんだろうか?

 それからもう一つ、服部さんによるWolfgang Paulyの作品集“Challenge of a Legacy”の書評が載っているので、そこからいくつか作品を引用してみよう。

(95) Wolfgang Pauly (Deutsches Wochenschach 1918) 

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                                         #8 (8+5)

1.Bg8! h4 2.b3 h3 3.Kf7 Kd5 4.Kf6+ Kc5 5.Bh7 Kd5 6.Bb1 Kc5 7.Ba2 Kd5 8.b4#

 何とも豪快なBのRundlauf。服部さんは看寿を想起したようだが、これはむしろ宗看的ではなかろうか。

(96) Wolfgang Pauly (Deutsches Wochenschach 1907) 

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                                         S#9 (7+4)

1.Rbb2 Kc6 2.b8=R Kd5 3.R8b3 Kc6 4.c8=R+ Kd5 5.Rd8+ Kc6 6.Rhd2 h2 7.R8d3 h3 8.Qf7+ Kc5 9.Qc4+ Rxc4#

 4枚のRでKの周りを固めてしまおうという、ユニークな発想が素晴らしい。若島さんもこの作品に対して「こういうのを見てると、『アイデアの勝利』としか言いようがありませんね」と書かれている。

 折角なのでもう一作、これはプロパラ9号でも紹介されていた傑作だ。

(97) Wolfgang Pauly (Eskilstuna Kuriren 1922) 

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           S#9 (5+6)

1.Qg5 Ke3 2.Qc5+ Kf3 3.Qg1 g6 4.Qg7 Ke3 5.Qa7+ Kf3 6.Qg1 g5 7.Qg6 Ke3 8.Qb6+ Kf3 9.Qg1 Bxb4#

 軌跡を変えてのQ3回転。文句なしに面白い。実はこの作品にinspireされて私の処女作も生まれたのだが、それはどうでもいい話(笑)。
 ちなみに、私もこの作品集は持っている。Donatiが終わったら、今度はPaulyをやろうかな?
(平成24年11月14日記)

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