見出し画像

オーソドックスの可能性(4-2)

(4-3) P. A. Orlimont (Deutsches Wochenschach 1913)
Dedicated to Carl Kockelkorn

画像1

           #4 (10+4)

 戦力差は圧倒的で黒Kは全く身動きが取れないが、逆に黒はRg6を取らせてしまえばステイルメイトに逃れることができる。従って、普通に1.Ra7?又はQa8?などとしても、1...Ra6!という捨て身の受けがあって旨くいかない。以下、2.Qf7として3.Ba3+ Ka1 4.Qa2#迄の詰を狙っても、これは2...Ra4+!で逃れである。

           (4-3-1)

画像2

           1.Ra7?は1...Ra6で逃れ

 正しい初手は1.Qg8!だ。スレットはさっきと同じ筋の2.Ra7 Ra6 3.Ba3+ Ka1 4.Qa2#で、もし1...Rg4+とされたら2.Qxg4と取り返せば良い(黒は2...hxg4が絶対で、黒はこの瞬間ステイルメイトでないので3.Ra7とできる)。
よって、黒はこれをRで取るしかない。

           (4-3-2)

画像4

           1...Rxg8の局面

 これで、白Rと黒Rの高さが逆転したので、今度は2.Ra7が成立する。これは3.Ra1をスレットとして持つので黒は2...Ra8と受けるしかないが、それでも構わず3.Ra1+とすれば、以下3...Rxa1 4.Ba3#迄の詰だ。纏めると、作意は以下の通り。

1.Qg8! Rxg8 2.Ra7 Ra8 3.Ra1+ Rxa1 4.Ba3#

 結局、初手のQ捨ては、黒Rの受けを予め回避する伏線的捨駒だった訳だ。白Rを捨ててからひょいと一枡Bが上がって詰め上がるあたりの感触は、短編詰将棋に通じるものがある。

(4-4) Herbert Grasemann (Schach 1951 v )

画像4

            #5 (6+11)

 出題図において、白Re7が邪魔駒になっていることにお気付きだろうか(無ければ1.Qg7#の1手詰)。しかも、これを1.Re4+と捨てると、これを取る手に対していずれも1手詰が用意されていて(1...fxe4/Sxe4 2.Qg7/Sxf5#)、ますます筋の一着に見えてくる。

           (4-4-1)

画像5

           1.Re4+?の局面

しかしこれは、1...Kc3と逃げられると、d2からの遁走を防ぐ為に2.Rd4とするしかなく、これを2...Sxd4と取られると逃れ。もう少し工夫が必要なようだ。
 この紛れ順をよく調べてみると、実はもう一枚邪魔駒があることに気付く筈。それはRb6だ。もしこの白Rがなければ、上の逃れ順において2...Sxd4に対しても3.Qa5#迄の詰である。
ということで、結局Rb6を消去してからRe7を消去すれば良いということが判明した。作意順は以下の通り。

1.Rb4+! Kc3 2.Rd4 Kxd4 3.Re4+ Kc3 4.Rd4 Kxd4/Sxd4 5.Qg7/Qa5#

「邪魔駒消去の為の邪魔駒消去」と書くと如何にも理屈っぽい感じがするが、そのロジックは明快でヤヤコシイ感じは微塵もない。典型的なドイツ論理派の作品と言えよう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?