見出し画像

ペトロビッチの問題の解答

 今日は、以前載せた入れ替えパズルの解答を載せておこう。

Nenad Petrovic (Die Schwalbe 1950, 1st Prize)

画像1

           Ortho-reconstruction (14+15)
 
 問題は「この局面から将棋流に数えて奇数手指すことによって、もう一度この局面を復元せよ」というものであった。当然のことながら、適当に手を進めた後同じ手順で戻しても偶数手にしかならない。つまり、白はどこかで1手で行ける所にわざと2手かけて進み、黒に手を渡す必要があるのだ(このことを「tempoを失う」という)。このtempo moveをどのように作り出すかが問題である。
 tempoを失うにはKかRを使うしかなく、良く考えるとKのtriangulationでは不可能なことが分かる。Rでtempoを失うにはRの横2枡が空いている必要があり、その為には初形で黒K側にある空きの枡も埋めなくてはならない。その穴を埋める駒は白か黒のSであるが、黒Sをa2に持っていくことは不可能であることも程なく判明する。
 黒はK(B)の往復運動が出来る限りはいくらでも白を待っていられるが、白Sでb1を埋めた瞬間に黒の手は著しく制限される。その時に白Rのtempo moveと黒の側の手が干渉しないような局面を得ることが果たして出来るのだろうか?

まずはとにかく手を進めてみよう。
1.Sg2 Be1 2.Bf2 Sg1 3.Be2 Ka2 4.R2d1 Bd2 5.Re1 Ka1 6.Rcd1 Bc1 7.Rd2 Ka2 8.Red1 Ka1 9.Ke1 Ka2 10.Bf1 Ka1 11.Re2 Ka2 12.R1d2 Ka1 13.Kd1 Ka2

           (26手目の局面)

画像2

 ここまでは、誰がやっても辿り着く筈。しかしこの次にR/B/Sのうちどれを動かすのか?そして、ここからどうやってSh2を引っ張り出し、どこでRにtempo moveさせるのだろうか?

14.Re1 Ka1 15.Be2 Ka2 16.Rf1 Ka1 17.Ke1 Ka2 18.Bd1 Se2 19.Bg1 Ka1 20.Rf2 Ka2 21.Sf1 Ka1 22.Bh2 Sg1 23.Rde2 Ka2 24.Sd2 Ka1 25.Rf1 Ba2

           (50手目の局面)

画像3

ここからの数手が勝負である。
26.Sb1 Sf2 27.Rd2 Sh1 28.Rdf2 Se2 29.Sd2 Sg1 30.Re2

 このRのtempo moveにより、59手目の局面は50手目の局面と同じものになっている!つまり、先手は後手に手を渡すことに成功したことになる訳だ。
 あとは簡単。今迄の順をただ逆に辿るだけである。

30... Bb1 31.R1f2 Ka2 32.Sf1 Ka1 33.Rd2 Se2 34.Bg1 Ka2 35.Sh2 Ka1 36.Rf1 Ka2 37.Bf2 Sg1 38.Be2 Ka1 39.Kd1 Ka2 40.Re1 Ka1 41.Bf1 Ka2 42.R1e2 Ka1 43.Ke1 Ka2 44.Rd1 Ka1 45.Red2 Ka2 46.Be2 Ka1 47.Kf1 Ka2 48.Re1 Ka1 49.R2d1 Bd2 50.Rc1 Ka2 51.Red1 Be1 52.Rd2 Ka1 53.Bd1 Se2 54.Bg1 Bf2 55.Se1まで109手

チェスプロブレムならではの複雑怪奇な入れ替え問題。当時の正解者も花沢氏ただ一人であった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?