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私家版・近代将棋図式精選(65)

私家版・近代将棋図式精選(65)

          (118)相馬慎一「初雪」

118 相馬慎一「初雪」

          (近代将棋 昭和63年7月号)
           第72期塚田賞中編賞

27飛イ26銀、A同飛ロ25銀、B同飛、24銀、C同飛、ハ23銀、D14桂、13玉、
23飛成、同玉、22飛、ニ14玉、E15銀、同玉、26角、16玉、F27銀、同玉、
48角、18玉、29銀、同と、27角、17玉、26飛成、28玉、19銀、同と、
49角、18玉、27龍迄33手詰。

イ23合は14桂以下簡単。
イ24銀は14桂で、以下
・31玉なら11飛、21合、同飛成、同玉、24飛以下。
・32玉なら21角、31玉、22桂成、同玉、24飛以下。
・13玉なら22角、23玉(14玉は12飛以下)、13飛、32玉、65角、54合、
 33角成以下。
イ25合は14桂で、以下
・31玉なら13角、32玉、21角、23玉、25飛以下。
・32玉なら21角以下。
・23玉なら25飛以下。
イ26歩は14桂で、以下
・31玉なら13角、32玉、21角、
23玉、26飛以下。
・32玉なら21角以下。
・13玉なら22角、24玉(14玉は17飛以下、又23玉は26飛、24銀、13飛
 以下)、13角打、23玉(14玉は17飛、23玉、24角成以下)、26飛、
 32玉、33角成、同玉、22角成、43玉、73飛、54玉、74飛成以下。
A14桂は13玉、22角、14玉で逃れ。(24玉でも詰まない)
ロ24銀は14桂、13玉、22角、14玉、15銀以下。
ロ25歩は14桂、13玉、22角以下。
B14桂は13玉、22角、24玉、13角打、15玉で逃れ。
C23銀は同玉、12角、同玉、21角、同玉、24飛、22歩、13桂、32玉、21角、
 31玉で逃れ。
C11銀は同玉、23桂、22玉、11角、11角、13玉、15飛打、同銀、同飛、
 24玉で逃れ。
ハ23歩は13銀、同玉、14飛打、22玉、11角、32玉、21角以下。
D21飛は同玉、23飛成、22歩(限定)で
・12銀は31玉、32銀、同金、同龍、同玉、21角、41玉、32銀、51玉、
 84角、62銀で逃れ。
・43角は32金(限定)、12銀、31玉、32角成、同金、43桂、同香、64角、
 53角(限定)、同角成、同香、21銀成、同玉(42玉は52金、同玉、
 74角以下詰む)、12金、31玉、22金、同金、42銀、同玉、22龍、
 32香(限定)、31銀、52玉、74角(85角は61玉、72銀、同玉、32龍、
 62桂(限定)以下逃れ)、61玉、83角成、72飛(限定)で逃れ。
ニ13玉は24角、14玉、15銀、25玉、33角成以下。
E25銀は15玉、16銀、同玉、27銀、17玉、26飛成、28玉以下逃れ。
F17銀は27玉、48角、18玉以下逃れ。

 まず表層的な事からいうと、本作は無仕掛からの四銀連合いという条件作である。だが、本作の本当に凄いところはそのような条件をこなしてみせたことではなく、作者の手順構成に対する意識の高さである。
 手順を追ってもらえば分かると思うが、27飛に対して発生した4枚の銀合を持駒にした後、攻方はそれを全部捨駒として使っている。ここだけを見ても、彼が「ある形式的条件を設定し、それをクリアすることだけを目的に創作する」というタイプの作家ではないことがお分かり頂けるだろう。様式美はあくまでも手順中に存在するのだ。
 更にもう一つ。Dの紛れ順を見て頂きたい。実は9手目21飛以下の紛れはかなり際どいのだが、この紛れ順中で銀以外の6種類の限定合が発生していることにお気付きだろうか。銀合は作意順に出ているので、つまり本作は作意と紛れを合わせると七種合になっているのだ!(作者は半分冗談で「紛れ七種合」と言っていた)条件を成立させるだけでなく、こんな隠し味まで用意してあるとは…。
 彼は指将棋の強豪でもあるのだが、その読みの力が理想的な形で詰将棋に活かされた、相馬慎一の代表作である。

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