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JOSIF KRICHELI傑作選(7)

(8) Josif Kricheli (Schahmat 1980)

#16 (4+12)

 (8)も素晴らしい作品だ。ここで我々は、3つの異なったバッテリー(前後の駒の組み替えを含む)を目撃することになる。
 テーマに関連するトライは1.Be7? (2.Sd6#)で、以下1...Kf7 2.Bxf6+ Kf8! 3.Bg7+ Ke8 4.Sd6+ Kd8 5.Bf8 Kxc7! で逃れ。キーは1.Sd6+で、1...Kd8(f8) 2.Sb5 (スレットは3.Be7+ Ke8 4.Sd6#) 2...Ke8 3.Be7 (4.Sd6#) 3...Kf7 4.Bd6+ Ke8 5.Re7+ Kf8! (5...Kd8? なら6.Sxa7として以下7.Sc6+ Kc8 8.Rc7#まで。これが白Bをd6に移動した意味だ) 6.Rxa7+! Ke8 7.Be7 Kf7 8.Bc5+ Ke8 9.Sd6+ Kf8 (9...Kd8だと10.Bb6#) 10.Se4+ Ke8 となって、初形と比較すると、白RがKの届かないところに移動したことになる。これにより、最初は不成立だったトライの筋が今度は成立する:11.Be7 Kf7 12.Bxf6+ Kf8 (12...Ke8は13.Sd6+ Kf8 14.Ra8#) 13.Bg7+ Ke8 14.Sd6+ Kd8 15.Bf8 --- 16.Be7#.

(9) Josif Kricheli (Schach Echo 1979, 1st Prize)

#11 (8+12)

 ここまでの6作において、我々はその作品が持つ明晰さを鑑賞してきた。しかし(9)は、より複雑化しているように私には見える。鑑賞の仕方を変えてみよう:これは白Bc6が単独で8手かけて黒に打ち勝つという、一種のタスクなのだ。

 1.Bc7! (スレットは2.g4#) 1...Bd7!(1...Qc5? は2.dxc5 Bd7) 2.Bb7!! (他の候補手をいくつか試してみよう: 2.Bf3?は2...b2!で、2.Ba8?は2...Qf8!で、2.Be4?は2...Qe7!で、そして2.Bd5?は2...Qc5 3.dxc5 d1=Qでそれぞれ逃れる) 2...Bc8 3.Ba8! (黒Bが8段目にいるため3...Qf8が受けにならないので、この手が成立する)3...Qxa5 4.Bf3! (4.Be4? なら4...Bb7!! として、以下5.Bxb7ならば5...Qa7!で、また5.d5なら5...Bxd5 6.Bxd5 b4!でそれぞれ逃れ) 4...Qc3! (4..Bb7!? だと5.Sg3+ Kh2 6.Se4+! Kh1 7.g4#までの詰) 5.Bc6! (5.Bd5(e4)?なら、5...Qxd4! 6.Sxd4 Bxd4!で逃れ。勿論、5.Ba8? は5...Qa5! で2.0手前に戻ってしまう) 5...Bd7 6.Ba8! (これが成立するのは、黒Bがc8から移動したお陰。6.Bb7??は6...Bc8!とされる) 6...Qa5 7.Be4!! (7.Bd5?は7...b4!で逃れ) 7...Sc3 となれば、この黒Sが黒Qの受けを邪魔するため、白は以下のように収束に入ることができる:8.Bf3! Qa8/Bc6 9.Sg3+ Kh2 10.Se4+! Kh1 11.g4# (或いは7...Bc6 8.Bxc6 Qa8 9.Bxa8 Sc3 10.g4+ Se4/Sd5 11.Bxe4/Bxd5#まで。: こちらの変化では、白Bは2手多く動くことになる。双方のBによる見事な決闘だ。

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