Retros on Weekend (21)
(20) Jean-Michel Trillon (Rex Multiplex 1985 , 2nd Prize)
明らかに、Bは4枚とも初形位置で取られているので、白Bf6は成駒である。これを考慮すると、なくなった駒は白がBBSSの4枚で、黒はQBBSSPPの7枚。従って、黒Pg4が取った駒は白Sだと分かる。
白Bf6は、Pf2がPf2-f4xSe5xSd6xPc7xQb8=Bと4枚駒取りをして成ったものだ。(Grid Chessのルール上、白Pが黒Pf7をe5で取ることはできない!)ということは、白Pg5は黒Pを取っており、この黒Pは白Sを取っている。これで駒取りの位置と種類は全て判明した。特に「白Pは黒Sを2枚とも取ってから成っている」という事実が、手番確定のために決定的な情報である。
出題図が現在白番だと仮定しよう。黒が戻せる駒はPしかないので、白が黒Qをuncaptureしないと早晩retro-stalemateに陥ってしまう。これより、逆算手順は例えば以下のようなものになる筈だ。
Retract:1...Pa7-a5 2.Bd4-f6 Ph5xSg4 3.Ph4xPg5 Pf6xSg5 3.Be5-d4 Pf7-f6 4.Bb8-e5 Ph7-h5 5.Pc7xQb8
(図1)
これで、黒が逆算手順に困ることはなくなった。では、この局面において双方の着手の偶奇性を調べてみよう。白はQが奇数手、Sが偶数手、Pが偶数手(6手)なので、合計は奇数手。一方黒は、Qが奇数手、Sも奇数手で、合計は偶数手。ということは、現在黒番である。これは、この局面における次の着手が5.Pc7xQb8であることと矛盾。よって背理法により、現在黒番であることが証明され、1...Rxh1#が正解となる。
(21) Andrej N. Kornilow (Europe Echecs 379/380 07-08/1990)