M.Caillaudレトロプロブレム傑作選(54)
(54)Michel Caillaud(WCCC Rhodes 2007 Sake Tourney 1st Prize e.a.)
1.Bd2 0-0 2.Bg5 c3#
通常のプロブレムでは、当然のことながら詰める目標は敵のKである。このことを「KはRoyal性を持っている」と表現しよう。このRoyal性を他の駒に移植できるとしたらどうなるだろうか? こういうアイデアから生まれたのが、このDisguised Kingsだ。ルールは以下の通り。
(0)白黒双方とも、いずれか1枚の駒のみRoyal性を持っていることとする。(以下、その駒をDKと略す)
(1)もしKがDKでなければ、取られてもよい。
(2)PはKに成ることはできない。
(3)もしPがDKであり、アンパサンで取られる可能性があるときには、ダブルステップはできない。
(4)もしKまたはRがDKで、DKに対してチェックがかかっていたり、DKの通過する桝に敵の駒の利きがあったりした場合は、キャスリングはできない。
尚、どの駒がDKなのかは前もって分かっておらず、「やはりKがDKだった」という可能性もある。以上を念頭に置いて、本作を分析してみることにしよう。
まず、明らかにPh2はDKではなく、1.Bd2 0-0という手順において、Bg5, Ke1, Rh1がいずれもDKではないことが示される。また、2手目に2...Pc3という手があるので、このPもDKではない。従って、白のDKはBb1ということになる。
ここで、簡単なレトロ解析を用いてみよう。初形が黒番ということは、その直前に白の着手があった筈である。そして一寸考えてみればお分かりのように、それはBa2-b1しかない。ということは、黒Bg8もDKではない!
(1手前の局面)
では、更にその1手前の黒の着手は何だろうか?Ba2がDKであることを考慮すると、それはRb3-a3+以外あり得ない。ということはRa3もまたDKではなく(もしRb3がDKだとすると、b3においてあり得ないdouble checkがかかっていたことになるから)、これでやっとSh7がDKであることが示された。
(2手前の局面)
白のキャスリングと黒Bのスイッチバックが有機的に絡まり、黒Sh7を仕留める手順は実に鮮やか。珍妙なルールにも関わらず、通常の手順とレトロ解析を交えて奥深い論理を内蔵させた構成は流石という他ない。
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