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L.Ceriani レトロプロブレム傑作選(36)

(36)Luigi Ceriani (La Genesi delle Posizioni 1961)

局面をほぐせ(12+14)

 なくなった駒は、白がSPPPの4枚で、黒がQRの2枚。黒側の駒取りはb6,c6,d5,f5のPによるもので尽きている。従って、黒Pg4は直進しており、これより白Pg6が少なくとも一枚駒取りをしていることになる。(あと一枚は、現時点では不明)更に、a筋とe筋の白Pが成っていることも明らかだ。 
 (35)を参考にすると、白Qh4をa8でunpromotionさせることが目的になる筈だ。その為には白Kd8とする必要があるが、すると白Bh8/黒Kf8という形を取らないといけないことがすぐに分かる。(白Rg7+白Bh6でも黒Kf8とできそうに見えるが、実際にやってみると途中で黒が手詰まりになるので不可)ということは、白Sh8を動かさなくてはならないことになり、その手段はunpromotionしかない。これで白がg-h筋でcross captureしていることも判明し、白側の駒取りもすべて確定した。では、この線に沿ってQa8型を目指し、手を進めてみよう。

1...Ba7-b8+ 2.Qg3-h4 Se7-g8 3.Qa3-g3 Rg8-f8 4.Bf8-g7 Rg7-g8 5. Q--
Sg8-e7 6.Be7-f8 Sf8-h7 7.Bd8-e7

           (図1)

 まずは白Sの成を戻すのだが、単にh7が空いているだけではダメ。先に白Rh6を脱出させておく必要があり、その為に白Bはd8まで移動させられる。

7...Se7-g8 8.Rh7-h6 Rg8-g7 9.Rg7-h7 Sh7-f8 10.Q-- Sf8-h7 11.h7-h8=S
Rh8-g8 12.Ph6-h7

           (図2)

 白Pをh6まで引き戻し、d8まで送り込んだ白Bを今度はe7-f8-g7-h8とジグザグに動かして右端まで連れていく。その際に白Rg7/黒Rh8ではなく、白Rh8/黒Rg7としておくのも芸が細かいところ。(そうしないと、白のBf8-Rg8というバッテリーができてしまい、Bg7-f8がillegalとなる)

12...Rh7-h8 13.Rg8-g7 Rg7-h7 14.Rh8-g8 Sg8-e7 15.Be7-d8 Sh7-f8
16.Bf8-e7 Se7-g8 17.Q-- Rg8-g7 18.Bg7-h8 Sf8-h7 19.Rh7-h8 Rh8-g8
20.Q-- Rg8-h8 21.Bh8-g7 Rg7-g8 22.Q-- Rg8-g7 23.Rg7-h7 Sh7-f8
24.Q-- Kf8-e8 25.Kd8-c7 Bb8-a7 26.Qa8-a3

           (図3)

*現在黒番

 これで当初の予定通り、白Qa8の局面を作ることに成功した。では、この後すぐに、26...Ph3-h2 27.a7-a8=Q Ph4-h3 28.a6-a7 Pa7xSb6...と戻せばよいのかというと、そうは問屋が卸さない。つまり、このままだと白が29.Sa4-b6と戻した局面は、黒がretro-stalemateになってしまうのだ!(この辺の構造は、(35)と全く同じである)
 この局面を白番で迎える為にはtempoを失うことが必要であり、それが可能な駒は一つしかない。勿論それは黒Rだ。Rが同色の桝を移動できるよう、白Bは再度d8まで移動させられる。

26...Ba7-b8 27.Kc7-d8 Ke8-f8 28.Qb8-a8 Sf8-h7 29.Rh7-g7 Rg7-g8
30.Qa8-b8 Rg8-g7 31.Bg7-h8 Rh8-g8 32.Qb8-a8 Rg8-h8 33.Rh8-h7 Sh7-f8
34.Bf8-g7 Rg7-g8 35.Qa8-b8 Sg8-e7 36.Be7-f8 Sf8-h7 37.Bd8-e7 Se7-g8
38.Rh7-h8 Rg8-g7 39.Rg7-h7 Rh8-g8 40.Qb8-a8 Sh7-f8

           (図4)

 これでやっと舞台が整った。ここで黒Rがtempoを失った後、これを逆に辿れば、図3の局面を白番で迎えることができる。

41.Qa8-b8 Rh8-f8 42.Qb8-a8 Rg8-f8 43.Qa8-b8 Rh8-g8 44.Qb8-a8 Sf8-h7 45.Rh7-g7 Rg8-h8 46.Rh8-h7 Rg7-g8 47.Qa8-b8 Sg8-e7 48.Be7-d8 Sh7-f8
49.Bf8-e7 Se7-g8 50.Qb8-a8 Rg8-g7 51.Bg7-f8 Sf8-h7 52.Rh7-h8 Rh8-g8
53.Qa8-b8 Rg8-h8 54.Bh8-g7 Rg7-g8 55.Qb8-a8 Rg8-g7 56.Rg7-h7 Sh7-f8
57.Qa8-b8 Kf8-e8 58.Kd8-c7 Bb8-a7

           (図5)

*現在白番

 25.5手目の局面から数えると、実に32.5手もかけて手番を入れ替えたことになる。あとは、59.a7-a8=Q Ph3-h2 60.a6-a7 Pa7xSb6 61.Sa4-b6 Ph4-h3
62.Pb6-b7 Bb7-c8...と戻せば、その後は容易に局面をほぐすことができる。

 恐らく作者は、前作の創作過程で白Bをd8まで送り込むことができることに気付いたのであろう。白Bの振幅が広がったことで、作品自体のスケールもまた一段と大きくなったという印象を受ける。

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