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L.Ceriani レトロプロブレム傑作選(32)

(32)Luigi Ceriani(Israel Ring Tourney HAP 1959, 1st Prize)

局面をほぐせ(9+15)

 なくなった駒は白がQRBSPPPの7枚で、黒はQ1枚だけ。白側の駒取りはPd7によるもので尽きている。また黒側の駒取りはb,c,e,f,g筋のPによるものが6枚(白Pb6,c6は直進しているので、黒Pb5,c5はcross captureをしている)で、これに最終手のBによる駒取りを加えると、黒の駒取りもこれで尽きている。従って、a,h筋の白Pはいずれも成っていることが分かる。

 さて、今迄の作例からいって、白Sをc7に挟んでBb8-a7とし、その後c7の遮蔽駒を黒Rと入れ替えることでS成を戻すということになりそうだ。しかし、すぐにSc3をc7へ連れていくのは巧くいかない。(具体的には、白Sをc7に入れる迄に黒はPg4をg6まで戻さざるを得ず、そうすると白がPa7-a8=Sと戻した瞬間に黒の待ち手がない)それに、成を戻すのは明らかにh筋の方が簡単だ。前もってh筋の白Pを戻しておけば、その後a筋の白Pを戻す際の手待ちにも利用できそうだ。
 黒Bb2が何を取ったのかは現時点では不明だが、取り敢えずSを取ったものとして、逆算してみることにしよう。すると、具体的な手順は次のようになる。

1...Bc1xSb2+ 2.Se2-c3 Ra5-a6 3-5.Sh8-g6-f4-e2 6-9.Ra6-a5 Ph4-h5-h6-h7-h8=S

           (途中図1)

 ここまで白Pを戻すと、9.Ph5xSg4と黒Pg4が白Sを戻してくれる。この白Sを使ってc7を塞ぎにかかれば良さそうだ。

9...Ph5xSg4 10-12.Sb4-c2-e3-g4 Ra6-a5 13.Ph3-h4 Ra5-a6 14.Sa6-b4 Ph6-h5 15.Sc7-a6 Ra6-a5 16.Bb8-a7 Ra8-a6 17.Ba7-b8 Rb8-a8

           (途中図2)

 h筋のPを双方とも1手ずつ手待ちに利用し、このあたりまでは予定通りに進む。特に紛れるところもないだろう。ここからが勝負どころだ。
 焦ってすぐに18.Sa8-c7??とやると18...Rb7-b8に対しPh2-h3と戻すしかなくなり、後で困る。よって、折角a8に入れる位置にいるが、白Sは一旦a6-b4と退却するしかない。
 本当はここで黒Rがb8ではなくb7に居て欲しいのだ。しかしこの狭い空間ではtempoを失うことは不可能。さて、どうしたらよいのだろうか?

18.Sa6-c7 Rb7-b8 19.Sb4-a6 Rc7-b7 20.Bb8-a7 Sa7-c8 21.Sa6-b4 Rc8-c7!
22.Sc7-a6

           (途中図3)

 黒Rはc7を再度白Sに任せて、8段目に出ていく。だが、ここでtempoを失ったとしても、黒Rが再度c7へ戻ることは不可能だ。しかも白は、23手目に虎の子のPh3も動かさざるを得なくなり、手待ちに使える手を失ってしまう。そこまでして一体何を狙っているのだろうか?その答えは、実に意外なものである。

22...Rg8-c8 23.Ph2-h3 Sc8-a7 24-26.Ba7-b8 Rc2-c3-g3-g8 27.Qc3-b2 Rb2-c2

           (途中図4)

 この黒Rが狙っていたのはc7に戻ることではなく、遠くb2地点でピンされている白駒を解放することだったのだ!!それと同時に、最終手で黒Bに取られたのが白Qだったことも判明する。a8でunpromotionされる駒は白Sではなく、この白Qだったのだ!これでやっと、作者の目論見を全部暴いたことになる。

28.Bb8-a7 Sa7-c8 29.Qb4-c3 Sc8-a7 30.Qa5-b4 Sa7-c8 31.Qa6-a5 Sc8-a7
32.Qb7-a6 Sa7-c8 33.Qa8-b7 Sc8-a7 34.Pa7-a8=Q Ph7-h6 35.Pa6-a7...

           (途中図5)

 その後も白Qによるtempo moveが入っていて、最後まで楽しめる。実にスケールの大きい、見事な構成ではないか!

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