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プロパラを振り返る(12)

今日はプロパラ第7号を読んでみることにしよう。

(20) 小林敏樹 (Problem Paradise 7, 1997) 

20 小林敏樹(H#3)

                                         H#3 b)Re8→d8 (3+7)

a)1.Bd5 Re1 2.Re2 Be5+ 3.Ke4 Rxe2#
b)1.Be6 Bh8 2.Rg7 Rd4+ 3.Ke5 Bxg7#

 B/Rの最遠移動により、盤上にくっきりと対照性が浮かび上がる。ヘルプの教科書に載せてもいいような、模範的作品。

 続いては、世界のHashimotoのフェアリー趣向作。初見の方は、是非鑑賞してみて下さい。


(21) 橋本 哲 (Problem Paradise 7, 1997)

21 橋本 哲

                                         #48 Circe (6+13)

Circe:駒を取るとき、取られた駒は初形位置に再生する。R及びSの初形位置は、取られた場所の桝目の色によって決まる。Pの初形位置は取られた筋の2段目、フェアリー駒の初形位置は、取られた筋の8段目。取られた駒の初形位置が他の駒によって占領されているときは、その駒は通常通り盤上から消える。再生したRはキャスリング可能。

1.Bf4 d5 2.Rxd5(Pd7) e5 3.Rxe5(Pe7) f5 4.Rxf5(Pf7) g5 5.Rxg5(Pg7) Qa8+ 

21-1 橋本 哲

 初手Bf4はRh5#を狙っている。これに対する受けとして1...bxc5は、白Rがa1に復活するので、2.Rh1 Rxf3(Pf2) 3.Rxh3+(Bc8) Rxh3(Rh1) 4.Rxh3+以下。そこで、黒はとりあえずPを突き捨てて手数伸ばしをする。これも効かなくなったところで、まずはQa8+とチェックする。

6.Rxb5(Sg8) c5 7.Rxc5(Pc7) d5 8.Rxd5(Pd7) e5 9.Rxe5(Pe7) f5 10.Rxf5(Pf7) g5 11.Rxg5(Pg7) Sf6+ 

21-2 橋本 哲

 Qのチェックを受けるのに、駒取りで合いをするのがCirce独特の感覚。Sをg8に復活させて、2回目の突出しとなる。ちなみに、11...Sh6+とすると、後でRb5が受けにならなくなる。(Rh5に対してRxh5(Rh1)がチェックでないために、Rxh3が成立するから)

12.Rxa5(Bf8) b5 13.Rxb5(Pb7) c5 14.Rxc5(Pc7) d5 15.Rxd5(Pd7) e5 16.Rxe5(Pe7) g5 17.Rxg5(Pg7) Qa5 

21-3 橋本 哲

 さっきと同様、白は黒Bをf8に発生させて受ける。黒の更なる手段はQ捨てだ。これを捨てる意味は、後続手段によって明らかになる。

18.Rxa5(Qd8) b5 19.Rxb5(Pb7) c5 20.Rxc5(Pc7) d5 21.Rxd5(Pd7) e5 22.Rxe5(Pe7) g5 23.Rxg5(Pg7) Rb5 

21-4 橋本 哲

 黒は続いてb筋のRを合わせてくる。これが取られたときに復活する場所を開けておく必要があった訳だ。良くできているねえ。

24.Rxb5(Ra8) c5 25.Rxc5(Pc7) d5 26.Rxd5(Pd7) e5 27.Rxe5(Pe7) g5 28.Rxg5(Pg7) Ra5 29.Rxa5 b5 30.Rxb5(Pb7) c5 31.Rxc5(Pc7) d5 32.Rxd5(Pd7) e5 33.Rxe5(Pe7) g5 34.Rxg5(Pg7) Rb5 

21-5 橋本 哲

 a8に復活したRをぶつけると、今度は取られても復活できない。(桝目の色が異なるから)いや、ホント良くできてる。二枚目のRを使って、もう一度この手順を繰り返すことになる。

35.Rxb5(Ra8) c5 36.Rxc5(Pc7) d5 37.Rxd5(Pd7) e5 38.Rxe5(Pe7) g5 39.Rxg5(Pg7) Ra5 40.Rxa5 b5 41.Rxb5(Pb7) c5 42.Rxc5(Pc7) Sd5 43.Rxd5(Sg8) e5 44.Rxe5(Pe7) f5 45.Rxf5(Pf7) g5 46.Rxg5(Pg7) g6 

21-6 橋本 哲

 いよいよ黒は万策尽きた。もはやRh5を防ぐことはできない。

47.Rh5+ xh5(Rh1) 48.Rxh3(Bc8)#

(詰め上がり図) 

21-7 橋本 哲


 Circeルールを存分に活かした実に面白い趣向だと思うのだが、信じられないことに本作、The Problemistに投稿したところ不採用となったらしい。何だかAbelの論文を碌に読みもしなかったCauchyの所業を彷彿とさせる話である。
(平成23年12月7日記)

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