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プロパラを振り返る(151)

 今日読んでいるのはプロパラ70号(April-June 2015)。若島・橋本の両氏が“FIDE ALBUM 2007-2009”の中からピックアップした作品を解説するという豪華な企画があったので、その中でも特に面白いと思ったものを引用したいと思う。今日は若島さんの分です。

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C159 Anatoly Karamanits (A.Feokitstov-60 JT 2008, 4th HM)

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           #23 (3+7)

1.Sd1! Bd2 2.Sb2 Bf4 3.Sd3 Bg3 4.Sb4 Bf2 5.Sc2 b5 6.Sb4 Bd4 7.Sd3 Bc3 8.Sc5 Bb4 9.Se6 Be7 10.Sd4 Bb4 11.Sxb5 Bc5 12.Sc3 Bb4 13.Sd1 Bd2 14.Sb2 b5 15.Sd3 Bc3 16.Sc5 Bb4 17.Se6 Be7 18.Sd4 Bc5 19.Sc6 Bd6 20.Sd8 b4 21.Sf7 b3 22.Sh8 b2 23.Sxg6#

 一見すると、本当に詰むのかと思ってしまいそうな形をしているが、論理的に考えれば手がかりは見つかる。
 詰ませるには、最終手はSg2#かSxg6#である。つまり、Sがもしe5,e7,f8,h8またはe1,e3に到達できれば詰む。また、f7に到達できればh8に行けるので、f7に到達できるd6,d8の地点に到達できても必ず詰むことになる。
 そうした地点を白丸で表したのが次の参考図である。

C159 Anatoly Karamanits(#23) 図1

 この図で、白丸2つ以上にSでフォークをかければ、黒Bはそれを受けるための地点(つまりfocal point)が定まる。たとえば、Sd3に対してはe1,e5を受けてBc3またはBg3、Se6に対してはd8,f8を受けてBe7、といった具合である。特に、Sc4に来た場合には、d6,e5,e3を受けてBf4が絶対となる。このままでは堂々めぐりになるので、白はどこかでbPを取り、アクセスできる地点を増やす必要がある。
 これがこの問題の基本的な骨格で、白はbPが進む速度をにらみながらコースを設定することになる。ポイントは、5手目に5.Sc2で黒に5...b5を強要するところ。後は、bPがb1=Qでg6を受ける手に注意しながら、それより1手早くh8に到達するのが狙いとなる。
 簡単な設定で、この楽しいSとBの追いかけっこを成立させているのに驚く。


F225 Hans Peter Rehm (Die Schwalbe 2007, 1-2 Prize e.a.)

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           S#18 (11+7)

1.Qa6+ Kb4 2.Rb5+ Kc4 3.Rbf5+ Kb4 4.Ke5+ Kc5 5.Qa3+ Kb5 6.Rb4+ Kc5 7.Re4+ Kb5 8.Qa6+ Kc5 9.Sf6! Ba7! 10.Qa3+ Kb5 11.Rb4+ Kc5 12.Rbf4+ Kb5 13.Qa6+ Kc5 14.Ke4+ Kb4 15.Rb5+ Kc4 16.Re5+ Kb4 17.Qa5+ Kc4 18.exd3+ Bxd3#

 からくり箱。原形のまま、黒のBb8をa7に移動させたい。とは言え、黒にはいくらでも指す手があるので、Ba7を強制させるためには、そのBによって白が自殺できるような手順をthreatとして見せる必要がある。それが、8手目までの仕掛けで、9.Sf6!となったところで白から10.Bd6+ Bxd6#というthreatがあり、これで9...Ba7が強制できる仕組み。後はもう一度ネジを逆さまに巻いて、原形に戻してやると、18.exd3+ Bxd3#までの詰みが実現する。
 こういうのを見ていると、Rehmが詰将棋作家だったらどんな作品を作っていただろうか…と、あらぬ想像をしてしまう。

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