全国大会参加記(平成26年)その4

 翌日は8時過ぎ起床。シャワーを浴びてから、ホテルの朝食を食べに1Fに降りる。さて、午前中をどう過ごそうかと思案しながらパンをかじっていると、何と上田さんが外から入ってこられるではないか!これは宝くじで3億円当たるよりもラッキーだ。聞くと「お昼から友人と会う約束があるが、それまでは特に予定がない」とのこと。待ち合わせ場所は東京駅の近くだというので、9時過ぎにチェックアウトして、二人で東京駅へと移動した。生憎適当な喫茶店を見付けることが出来ず、しばらく彷徨った後で「銀の鈴」で缶コーヒーを飲みながらお話を伺うことになった。全国大会の次の日に、午前中の3時間ほどを上田さんと語り合うという、この至福のひととき!以下に、思い出せる範囲で上田語録を書き留めておきたいと思う。

語録その1
「みんな、何で若島さんがああなってしまったのかと僕に聞くねん。わしゃ知らんって」

 まあ、そりゃそうだ。氏の一番の理解者であるとはいえ、そこまでは責任持てないですよね。
 若島さんについては、近年急に作風が変化したように見えるのは事実だ。でも私は「実は、創作の仕方は変わってはいないのではないか」という仮説を持っている。つまり、表現したいものがあって、それを成立させる構図をミニマムで作るというのが若島流好形作の極意だとしたら、近年手がけている構想はどう頑張っても成立させるだけで既に15枚かかってしまうということではないだろうか。この仮説を補強する有力な情報も上田さんから提供されたのだが、これはまだ秘密にしておこう。

語録その2
「透明駒は、それがどう使われたら一番おもろいかをもっとみんなで考えなあかん」

 つまり「通常の詰将棋やフェアリーに単純に組み込むだけではなく、もっと別な表現方法があるかもしれない。その世界に入って来てほしいのなら、どういう導入が適切なのか、そこから考えないといけない」ということだ。
 実際上田さんは、覆面駒を詰将棋に導入する際、すぐに詰将棋に組み込むのではなく「先手玉を使って、覆面駒をすべて判明させよ」というパズルの形でそれを紹介している。透明駒にしても性急に作品化するより、その特徴がよく表れたパズルを考えることが必要なのかもしれない。

語録その3
「チェスプロブレムは、レトロ以外はたいしたことあらへん」

 上田さんにしてはじめて口にできるお言葉。私などがうっかり口走ったらただの妄言だ。

 この他にも、某大物作家の近況、般若一族のこと、宮原君と久保君についてのエピソードなど話のネタは尽きなかったが、あっという間に3時間が過ぎてしまい、11時半過ぎにお別れすることになった。ああ楽しかった!

 最後に、帰りの新幹線の中で吉岡作が1つ解けたことと、私の部屋から発掘された中村ノリのバファローズ時代のうちわが「銀の鈴」にて上田さんに献上されたことを付記して、この私的な大会日記を終わりたいと思う。(完)

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