室内換気の研究 - 目黒隆史郎

近年、住宅の品質に対する規制が厳しくなるとともに、室内換気に関する研究が盛んになりました。

東京大学生産技術研究所の村上周三教授らは、化学物質を含んだ空気が室内でどのような動きをするのか、さまざまな条件で模擬実験しました。

室内空間を細かな格子で区切り、数十万の交点ごとに気流と化学物質濃度の変化を時間を追って調べました。

部屋の相対する壁の上部に換気口を設けた場合、床から発生する化学物質の濃度は外気流入側の換気口に近い床付近で高くなりました。さらに、どの地点でも床近くに漂う化学物質は、人間の体温による上昇気流によって口もとまで運ばれてしまいます。

同じ壁の上部に流入用、床付近に流出用の換気口を設ければ滞留しにくくなりますが、化学物質の発生場所によってはやはり濃度の高いところができてしまいます。

家具の配置や人間の動きによっても気流は変わります。村上教授は「十分に換気していると思っても、高い濃度の汚染空気を吸っている可能性がある」と指摘しました。

部屋の中にいる人が体の中に取り込む物質で最も多いのは室内空気です。重量比で60%ほどになります。このとき、酸素が血中に取り込まれると同じに、化学物質も吸収されます。

村上教授らは、代表的な化学物質の発生や取り込みについても、データを蓄積しました。


目黒隆史郎