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還暦アドレス・ホッパー 〜思い立ち

建造中の船底のような国際フォーラムの天井を見上げながら、避けていた事実にそろそろ向き合わなければならないと感じた。この景色とは別になんの関連もないのに。

もうすぐ還暦かぁ。過去を振り返ればいいのか、将来を見据えればいいのか、皆目見当がつかない。当たり前だ。初めて還暦を迎えるんだから。

思えばここ数年は仕事も減り続け、単価も下落気味。食料品で例えれば、賞味期限が切れそうな状態。何十年もフリーランスを続けていれば、いい時もあれば悪い時もあるものだが、こうまで低迷が続くとそう考えざるを得ない。どうやら生き方を変えなきゃならんのか。と、東京のど真ん中でそう思った。

色々と方向性は考えられるが、まずはこのところの収支バランスの悪さをどうにかしなければ基本の生活すら立ち行かなくなる。数年前に契約した時はさほど負担感がなかった家賃が、なんとも高く思えてきた。引越しどきか。結構長く住んでいたマンションを引き払うことを念頭に、どこに住むのか、どれくらいのコスト感なのか、シミュレーションを開始した。

実はこれまで十数回の引っ越しを経験していて、マニアじゃないけどそれなりに知見はあった。東京を中心に、ちょっと前の「住んでみたい街ランキング」に出てくる主だったとこには一通り住んでいたことがある。近県では神奈川にも長く住んでいた。一時は地方都市でほんの1〜2年ほど、仕事をしていたこともある。しかし、今のこの状況はこれまでと違い住みたいエリアに物件を探すのではなく、サスティナブルな生活のためのかなり妥協した物件を見つけなければならない。

良くも悪くも新型コロナの影響もある。仕事は打撃を受けたが、残ったのは全てリモートワークに切り替わった。そう、もう東京にいる必要はない。コロナがある程度収まったとしても、もはや昔のように毎回膝突き合わせてうち合わせをする社会には戻らないだろう。ただ100%そうなるわけではないとも思っている。その辺りがちょっとややこしい。さてどこへ行こう。

ここのところ地方への移住者が増えているというが、IターンUターン含め、どこがいいのか自分に問おてみてもめぼしい場所が思いつかない。基本的には東京が好きなんだろう。ワーケーションというのもよく目にするが、結局は一時的な気分転換にすぎないし、戻ってくる場所はいるよな。そんなこんなの選択肢をまるッと飲み込んで消化不良になった頭でたどり着くはずもない答えを探すのはやっぱりGoogle。しかし、検索ワードが出てこない。あれやこれやとコトバ遊びをしているうちに、多拠点生活というのにたどり着いた。さらに手繰っていくと気になるキーワードが。「アドレス・ホッパー」とな。

定義的には、固定の家を持たずに住居(住所)変えながら持ち歩けるだけの所有物で生活をするライフスタイルのようだ。まさにこれだ!という感じではないが、惹かれる要素はある。ちょっとこの辺りを深掘ってみるか。


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