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妻と縄 78.妻の玉座

スローセックス・・・
それは私たち夫婦にとって、快感を得るためだけのものではなく、肉体を越え魂を交える儀式だ。

そこには、全ての感情や欲望さえ消えてなくなり、ただ相手を慈しむ魂だけが存在する。
交わったまま動かず、ただ見つめ合い、唇を重ねる。
その時間の愛おしさ・・・。
人生の歓びをギュッと濃縮した時間なのだ。


「ねえ、カズミ・・・訊いていい?!」
「ああ・・・キャンプのこと?! いいわよ」
頬を桜色にほんのり染めて目を潤ませた妻が答えた。
私が口に出せないでいるのを、妻は分かっていたのだ。

「・・・・楽しかった?」
言葉を選ぶのをやめ、心のままに口に出した。

妻は、下からじっと私を見上げて言った。
「トモカズ、怒らないで聞いて」
「怒らないよ。約束する」
悲しみはするだろうけど・・・・

「トモカズに嘘はつきたくないの・・・」
「うん」
「楽しかった・・・・ごめん・・・」

分かってはいたが、ショックだった。
いきなりボディブローをもらった感じだ。
私の心配やジェラシーをよそに、妻は楽しんでいたのだ。

「大丈夫?!」
落ち込む私を妻は心配そうに見ている。
「・・・うん、ごめん・・・」
「ううん。謝るのは私の方。トモカズにとって辛いことだと判っているわ。でも黙っているより話した方が・・・私も苦しかったの」

「向こうでは、ずっと裸でいたの?」
「えっ!? ・・・・・そ、そうよ・・・・着ちゃダメだって言われたの・・・うっ」
私がアルバムを見たことを知らないのだ。

分ってはいたが、やはり直接本人から聞くと衝撃が大きい。
全裸の妻が、キャンプ場の至る所で犯され、凌辱される様子が浮かんだ。
妻の中で私のペニスがグッと膨らんだ。

「みんなに犯されて、辛くはなかったの?」
そこが最も心配で、聞きたかったところだ。

妻は、一瞬、困惑したような表情を浮かべ、そして私の瞳をじっと見つめて言った。
「トモカズ、ごめんね・・・・辛くはなかったわ・・・・私、・・・!」
私は思わず唇を重ねた。

私の脳裏に、笑いながら焼き肉を焼き、後ろから犯されている妻の姿が浮かんだ。
辛いはずはない。
次に来る言葉は、楽しかったの・・・もしくは、嬉しかったの・・・だ。

「もういいよ、カズミ、それ以上、言わないで」
「トモカズ、ごめんね・・・んんっ、はああっ」
妻の中で張り詰め脈動するペニス。


「それで・・・・本物の肉・・・肉便器になったの?」
「・・・・・・」
流石に答えられないか・・・・そう思った次の瞬間、
「なったわ・・・・私、あの人たちの肉便器になったの・・・・」
まるで独り言を言うようにつぶやいた。

「んんああああ~っ、大きいわ、トモカズ、大きいわ! んああ~っ」
激しく舌を絡ませ、妻を貪った。
食べても食べても満たされない食欲のようだ。

「ああ、カズミ・・・カズミ・・・カズミ・・・・」
「トモカズ、ごめんね、ああ、ごめんね」
私たちは激しく欲情したまま動かないでいた。
その続きがあることは、分かり合っていたのだ。

荒い息が収まった頃、私は欲情に包まれたまま言った。
「じゃあ・・・・これからずっとあの人たちの肉便器なの?」
「んああっ、そうよ・・・ずっとよ」
「ああっ、じゃあ、いつでもカズミを抱けるの? どこでもカズミを⁉」
「ああっ、そうよ。あの人たちは私のご主人様なの。あの人たちの言うことは絶対なの。ああっ、許して、トモカズ、許して!」
「俺がダメだと言っても?!」
「ああっ、そうよ、ご主人様に逆らえないの」

私は凍り付いた。
とうとう立場が逆転したのだ。
夫と言う最高位の玉座から引きずり降ろされたのだ。
私は、腹の出たあのオヤジたちに負けたのだ。

「トモカズ・・・・聞いて。トモカズも歓んでくれると思ったの。あの人たちの肉便器なることを」
「え⁉」
「私があの人たちの肉便器になることはイヤ?! 私と別れたい?! そんなにイヤ?!」

NTRを始めた最初から、いつかこんなことになるのでは、という予感はあった。
そうなるのが怖かった。
しかしどこかで、それを求めている自分がいたのも事実だ。

身体だけを許す関係より、妻が本気で男を愛し尽くすことを望んだ。
夢中になって男を貪り、男の与える快感に溺れる妻にこの上なく興奮した。
肉便器と聞いた時も、恐怖よりも先に好奇心が勝った。

ああ、私はこれを望んでいたというのか・・・・!?!

「先生も言ってたわ。トモカズもそれを望んでいるって」
その一言は、私を完全に打ちのめした。
私より数段、性に精通している縄師の言葉は、私の心に深く突き刺さった。
縄師は、私や妻よりもよほど二人を理解していた。
こうなることは、最初からお見通しだったのかも知れない。


「みんなのことが好きなの?」
我ながら子供じみた質問だと思った。
「・・・好きよ」
私から目を離さない。

「愛してるの?」
言ってから、しまったと思った。
発せられた言霊は、相手を傷つけ、私をも傷つける。

妻は私を抱きしめ耳元で囁いた。
「愛してるわ」

私は目をつむり、その言葉の意味を噛み締めた。
愛しているのか・・・

そして気が付けば口を開いていた。
「俺より?」

何を言ってるんだ、私は?
何の意味があるんだろう?
比べて傷付くのは私だ。
意味のない言葉。
愛のない言葉。
どうか答えないでくれ・・・私は祈った。

「分からないわ」
正直な思いなのかも知れない。
それとも私を慮《おもんばか》っての優しい答えなのか・・・⁉
取り敢えず、私は救われた。
それでも私の中の何かが、まだ満たされない。

「会いたいの?」
妻は横を向いて目を逸らし、そして向き直って言った。
「会いたい・・・・」

妻の本心なのだろう・・・・。
分かっていた。
なのに訊かずにはいられないのだ。


私は自分を誤魔化すように陽気に言った。
「中でも一番会いたいのは誰?」
「え⁉ そ、それは・・・・」
妻は言い淀んだ。
これだけはっきりと答える妻が言い淀むなんて・・・よほど言いにくい相手なのか?!

「トモカズは嫌だろうけど・・・・会長・・・会長なの」
「えっ!?!」
最も嫌がっていたあの男が!?!
私は息を飲んだ。
生理的に受け付けないって言ってたじゃないか!?

「トモカズと似ているの・・・」
以前聞いたことがある。
私のペニスと本当によく似ているのだと。
目を瞑れば、相手が私と錯覚しそうなほどだとか。

「それに・・・・キスが・・・キスがうまいの・・・・」
私は唖然として妻を見つめた。
私も会長が妻にキスをしているところを見たことがある。
あの脂ぎった分厚い唇で妻の口の周りをベトベトにして、今にも食べてしまいそうなほど貪欲で汚らしいあのキスが・・・・!?!

言葉を失った私に、妻は続けた。
「トモカズは嫌がるのは分かっていたわ。でも、あの人に抱かれていると、あの人のモノになったような気がするの」
「カズミ・・・・」
あの人・・・その言葉に、愛情が窺われる。
興奮した私は、無意識のうちに腰を動かしていた。

「んああっ・・・それに、あの人、唾が多いの。何度も飲み込まなきゃあならないの。ああああっ」
「あああああ、カズミ!」
「んああああ~っ、会長に犯されるのが好きなの。会長のオチンチンが好き! んんああっ」
「俺がダメだと言っても抱かれに行くのか?」
「ああ、そうよ。トモカズがダメだと言っても、私は会長に抱かれに行くわ。あの人とキスがしたいの。ああ、あの人のモノになりたいの! んんああああ~っ、いくう~っ!」
「カズミ~っ!」
私たちはほぼ同時に果てた。
腹の出た会長に組み敷かれ犯されている妻の姿を妄想しながら・・・!

今までは、これらの言葉はセックスを高ぶらせるためのスパイスだった。
しかし今は違う。妻の本当の気持ちなのだ。
恐らく会長を愛しているのは間違いないだろう。
妻はキスが好きだ。
会長も妻の唇を執拗に求めていた。
二人の性癖と言うか、好みが合ったのだ。


私は分からなくなっていた。
妻の愛さえ、不確かなものに思えてきた。
今や妻の玉座に鎮座するのは、私ではないのだ。
あの五人の男たちなのだ。

しかし、確実に言えることは、
今の私たち夫婦を支えているのは、私の妻への愛だけなのだ。
玉座から蹴落とされても愛し続ける、妻への献身的な愛だけなのだ。


「ねえ、トモカズ、見たい?」
「え?! ・・・・分からないよ」
一瞬、意味が分からなかったものの、それが会長に妻が抱かれている所だと言うことを理解した。

「ただし、動画だけよ。直接トモカズの前で抱くことはやめた方がいいって、先生が言ってたの。トモカズはまだ心の整理が出来ていないからって」
縄師の見込みに間違いはない。
「私の価値は、トモカズがいるからだって・・・。人妻だからこそ価値があるんだって。だから二人を別れさせるようなことはするなって言ってたわ。キャンプファイアーの時に」
火を囲みながらそんなことを話し合っていたのか・・・。
キャンプの目的が、まさに妻のみであることが分かる出来事だ。
妻一人の為のキャンプだったのだ。

「あと電話なら出来るわよ。始める時に」
妻はそれがどれだけ残酷なことを言っているのか、判っているのだろうか?
「どうする?!」
「うん・・・・」
「じゃあ、会長に訊いてみるね。電話と動画撮影と」
「あ、ああ・・・・」

妻は楽しそうに言った。
会長に抱かれることは、まるで私も認めた公然のことであるかのように。

その時、私は気付いた。
キャンプの目的は、まさにこれにあったのだ、と。
二日間、裸で過ごさせたのもそのためだ。
妻にとって犯されることが、まるでトイレで用を足すが如く日常的なものに思わせるために・・・・。

縄師の意識改革はまんまと成功した。
妻の罪の意識は、見事なまでにその重さを無くしたのだ。

妻が肉便器であることは、特別なことではない。
当たり前のことなのだと・・・・。



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