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萩尾望都対談集全4巻 祝・完結。萩尾望都×吾妻ひでお:『COM』とSFをめぐる「愛のトーク・イベント・ゾーン」

『漫画の手帖TOKUMARU』10号/2014年7月15日発行 掲載

 河出書房新社から70年代、80年代、90年代と続けて敢行された『萩尾望都対談集』は、2000年代の『愛するあなた 恋するわたし』が5月に発行、めでたく完結いたしました。その発売を記念して、去る5月31日(土)に青山ブックセンター本店でトークイベントが行われ、ゲストには最新巻に対談が収録された吾妻ひでお先生。このイベントはぎりぎりまでいろんな調整があったようで、ネットで発表されたのが電話予約日のほんの3,4日前。予約取りは実際に電話をかけた皆さんに聞くと1時間ほどで完売になってしまったそうで、本当に萩尾先生のイベント参加には覚悟と気合いが通常より100倍必要を再認識した今回でした。
 そんな中、対談集の編集協力をしております図書の家は、イベントでの質問や会場に映写する図版などを選ぶお仕事もさせていただきました。友人知人の皆さまにもご協力いただき、いつものことながら感謝感謝でございます。
 今回は、70年代からとても仲良しでいらっしゃる吾妻先生とのトークなので、まずはお二人の出会いはいったいいつなのか? というのが最初の質問だったのですが、これって昔からの『漫画の手帖』読者の皆さまならご存じかもしれないのですが、結構難易度が高かったのです。
 お二人ともSF大会で星雲賞をとられているし、そのあたりだろうと、もやっと思っていたんですが、いざ、いろんな資料に当たってみると、あまりはっきりしないんですね。萩尾先生は、今回の対談集に再録された「アズマヒデオとわたし」(初出:吾妻ひでお『ふたりと5人③』1995年 宙出版)の中では

「いつだったか覚えていない(SF大会だったような…)」

と書かれているし。かたや吾妻先生は…。トークイベント図版出しの話が来てからの約二週間は「にわか吾妻旧作読者」になって改めて色々読みましたが、吾妻先生、自己言及作品めちゃめちゃ多い!!! 探すのたいへんすぎ!!! でもめっちゃ面白い!!! で、ようやく間際になって発見したのがこのコマです(下図1)。


図1:吾妻ひでお「ダーティしでおの大冒険」(初出:『奇想天外』1980年10月 所収:『定本 不条理日記』太田出版)

 しかし、これ?とアタリはつけたものの、どなたにも確認のしようがなくて、いざ本番でいきなり映写でした。(小西はイベントではお二人の話の流れを聞きつつどの図版を出すかのパソコン係をしていました)

 そして、これが初対面のようではあるけれど、結局いつの何のときだったのかは、お二人の会話中では特定されなかったようですが、後で白峰彩子さんが6月2日にツイートしてくれたことによれば、

「初対面の「何かの宴会」と言われていたのは同人誌「へろ」(知佳舎)の打上げ兼渡す会のことでほぼまちがいないかと思います。」「吾妻さんのカットに米やんと新井さんがいらしたので」https://twitter.com/mtblanc_a/status/473322394522636289

 ということで、いろいろビンゴだったようです。

 この同人誌「へろ」は、1980年のSF大会(TOKON7)時期に知佳舎から発行された限定300部の書籍で正式名称は『ウロン文学選集11・第一回配本 クルムヘトロジャン「へろ」』、挿絵は吾妻先生、挟み込みの月報に、萩尾先生が寄稿されているんですよね。しかしこの本の制作時には、お二人はまだ出会っていないということで。(ちなみに、この時の星雲賞コミック部門受賞が萩尾先生の「スター・レッド」です)


 この話のあとはお互いの印象や、お互いの作品を初めて読んだのは何でいつかとか、『COM』のぐら・こんや岡田史子のこと、投稿時代からデビュー、合作、そしてお二人が大好きなSFの話を延々♪ というようにぶっ通しで1時間半続きますが、私はとにかく進行を見ながら、アタリをつけて選んできた図版をいかに話に合わせてタイミングをはずさずに会場に出すかに必死になっており、今になってみると、ほとんどこの貴重なトークをまともに覚えていないのですよね(泣)。でも、今回は寡黙で定評のある吾妻先生がとても饒舌で、もしかすると萩尾先生よりよく話されていたのかもしれません。まさにお二人の「愛のトーク・イベント・ゾーン」でした。良かった良かった!


 詳しい内容は、参加された皆さんがネットで感想やレポートなどをあげられていますのでぜひ。つぶやきをまとめてくださったり(註1)、詳細なレポートも(6月16日確認では、註2、註3)。図書の家でも、作業の参考にした作品及び資料、イベント当日に使用した図版等を一覧リストにして公開していますのでご参考までに(註4)。
 この対談は、次の東京オリンピックが開催される頃にきっと出版されるであろう、2010年代の対談をまとめた本に収録されるはず。河出の編集・穴沢さん、全4巻の発行、ホントにありがとうございました。そして別巻の5巻も、ぜひともよろしくお願いします。その前にぜひ、今回のイベントで吾妻先生が萩尾先生と話されるためにわざわざ用意されたという、濃ぉぉい緻密なSF愛で埋まったネタ帳も、ぜひ1冊の本にまとめて出してください!! もちろん、萩尾先生との綿密トーク付で〜。すごく期待しています。よろしくです!! 

                    2014.6.17 小西@図書の家



註1:@ei_no_ji さん作成のまとめ:「萩尾望都×吾妻ひでおトークイベント」拾い読み http://togetter.com/li/674513


註2:倉田わたるさん「廃墟通信」:2014年05月31日:バルテュス展/弥生美術館/萩尾望都×吾妻ひでお トークイベント http://www.kurata-wataru.com/ruin/ruinb45d.html


註3:「スティーブン・キング研究序説 ココログ分室」:2014/06/01萩尾望都、吾妻ひでおもキング好き http://tkr2000.cocolog-nifty.com/blog/2014/06/post-1a04.html


註4:「図書の家/萩尾望都研究室」:『愛するあなた 恋するわたし 萩尾望都 対談集 2000年代編』(河出書房新社) 刊行記念 萩尾望都 トークイベント ゲスト:吾妻ひでお の資料一覧 http://www.toshonoie.net//hagiken/note/20140531talk-event.html


data:『愛するあなた 恋するわたし 萩尾望都 対談集 2000年代編』(河出書房新社) 刊行記念
萩尾望都 トークイベント ゲスト:吾妻ひでお
日時:2014年5月31日(土)18:00~20:00 開場17:00~
会場:青山ブックセンター本店料金:2,700円(税込/対談集の書籍代1,620円を含む)

※会場写真撮影:卯月もよ


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