納税について
会社の法人税及び消費税を納税した。
納税というのは、私にとって存在の根幹を揺さぶる出来事である。なぜかと言えば、私は税金を納めるということについて合意を与えたことがないにもかかわらず、それを払っているからである。
私は日本に生まれることを選んで生まれてきたわけではない。私が生まれてくること、およびその態様について誰かの意志が働いたのだとすれば、それは両親である。特に私の両親の場合にはその計画性は明確だ。なぜなら特に私の母親は、私が生まれた1970年代の常識おいては既に比較的高齢であり(とはいえ30代前半であるので今の感覚から考えれば十分若いわけだが)、両親曰く「私を早く生まなければならないと焦った」そうである。だからこそ、私と姉とは1年違いの年子なのだそうだ。ちなみに姉は、話を聞くところによると「できちゃった」子供なのだそうで、その姉が原因で両親は結婚したとのこと。つまり、うちの両親は当時はまだ珍しかった「できちゃった婚」なのだそうだ。姉はこのことを知って大変嘆いたらしいが、今改めて考えてみると、姉は両親の意図のないところで生まれてきているのであるから、その存在の発生の段階には誰の意図も働いていないということになる。先ずそこに愛があった。そして姉はその愛の渦の中から、自然発生したのだ。その経緯は私が生まれたそれ——両親の打算——とは全く異なっていて、却って美しい話だと思うのであるが、それは閑話休題である。
私が日本に生まれることになったのは、両親が日本に住んでいたからである。だから、私が日本で税金を払っているのは、両親の判断によるものだと言える。少なくとも私は日本で税金を払うことに同意を与えたことはない。それでも人は言うかもしれない。あなたは十分にこれまで日本国からサービスを受けてきたじゃないか。自分が受けてきたサービスの対価は、少なくとも返すべきじゃないか、と。私はその考えには与しない。
「スワロウテイル」という大ヒット映画があった。岩井俊二監督、1996年。その冒頭のシーン、伊藤歩扮するアゲハに率いられた悪ガキ連が、通りかかった車のフロントガラスにホースで水をぶっかける。車は止まらざるを得ない。止まった車の窓ガラスをワイパーで拭き始める、悪ガキ連。
運転手:こらあ!なにやってんだあ!
アゲハ:しめて1万円ですぅ!
冒頭にリンクを貼ったCharaのswallowtail butterfly ~あいのうた~のPVでは3:09頃からそのシーンが採用されている。
言いたいことは、税金というのはまさにこういう押し付け商売なのである。
国:ほら、義務教育も、公共サービスも、福祉サービスも、もう全部受け取っちゃってるんじゃん。ママに教わらなかったのかい?借りたものは、返さなくっちゃいけないんだよ?
こういうのを、社会学の用語では「社会契約説」というらしい。確かに事前に約束はしてないんだけどさ、それでももう貰っちゃってるんだから、それはもう事前に約束してるのと差がないんじゃない?だから、これはもう「先に契約した」っていうことにしようよ。昔、いろんなえらい哲学者がこういうようなことを言っていたそうです。
冗談じゃないよ。これは「しめて1万円ですぅ」と何ら変わるところがない。だって、日本に生まれてくることを決めたのは私じゃないんだから。
今日はこの辺にしておこうかな。
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