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【実体験】自衛官在職中に「転職活動」をしても良いのか?(空自元3佐が回答)

規律が厳しいことで有名な自衛隊。
その中で勤務しているとこんな話を聞くことがあります。
それは「自衛隊では在職中の転職活動はしてはいけない」というものです。
今日は自衛官の転職活動に関する誤解と法律に基づく真実を、再就職規制に係る調査を実際に受けた元空自幹部目線でお伝えします。

この記事はこんな方にオススメです!

  • 転職活動を考えている自衛官

  • 転職活動をしているけど、希望企業が「利害関係者」なのか判断がつかない方

  • 採用したい現役自衛官が自社の「利害関係者」なのか判断がつかない採用担当の方

※本記事については、2021年当時の状況について実体験に基づいて記載しています。現在の状況については、防衛省HPからご確認ください。

そもそも「在職中の転職活動は禁止されているのか?」

結論

現役自衛官の転職活動は禁止されていない。

色々条件はありますが、あなたが1尉以下の自衛官なら、転職活動で配慮すべき事項は特にありません。

そもそも日本には職業選択の自由が認められていて、それは日本憲法で保証されている権利であるため、これを自衛隊が禁止することはできません。

事実私は在職中に転職活動を行いましたが、何の処罰も受けていません。


なぜ「禁止されている」という話をよく聞くのか?

では、なぜ「在職中の転職活動が禁止されている」という話があたかも本当の話のように扱われているのでしょうか?

問題なのは、「在職中の転職活動は禁止されている」という根拠が不明確にも関わらず、あたかも本当のことのように扱われていることです。

何度も言いますが、自衛官の現職期間における転職活動は禁止されていません。
禁止されているのは、「利害関係者に対する求職活動」あるいは「利害関係者に対して、自衛官を採用するよう口利き」することです。

おそらくこの「転職活動禁止」については、現役自衛官に対する再就職規制がもとになっています。再就職規制では、1尉以上の現役自衛官による利害関係者への職業あっせんの依頼などを禁止しています。

それを読み違えた誰かあるいは簡潔にまとめようとした誰かが「要は、自衛官は現役中に転職活動をしてはいけないということだ」とでも言ったのでしょう。(割と真実だと思っていて、それを言っている姿がアリアリと脳裏に浮かぶ……)

その責任感のない一言が部隊での共通認識になってしまったものと思われます。

どんな人が再就職規制の対象になってしまうのか

※ここから先は私自身が自衛隊で学んだこと及び実際に再就職規制の調査を受けた2021年当時の実体験を元に記載しています。本記事に依拠した行為によって発生した結果について、責任は負いかねます。https://www.mod.go.jp/j/presiding/saishushoku/pdf/pamphlet_01.pdf)。

あなたが1尉以上の自衛官なら再就職規制に引っかかる可能性があるので要注意です。

注意すべきポイントは「応募しようとしている企業との利害関係の有無」です。
私自身この点は「何度も何度も何度も」確認しました!!
当時3等空佐で制限が多いのもわかっていたため、法令についての確認は何度も行いました。ただ誰かに確認を取ることができなかったので、その点は非常にツラい点でした。。

ここでは、あなたが補給処や補給本部(補給統制本部)で勤務している1尉以上の自衛官だと仮定します。

あなたがA社の社員と業務上やりとりをすることがあるのであれば、「あなたはA社と利害関係がある」と言えます。たとえA社が防衛省と契約関係がなくても、あなたとA社は利害関係にあるため注意して下さい。

そのため、あなたはA社に対して転職活動を行うことは禁止されています。

ではあなた自身が利害関係がなくても、知り合いの他の自衛官が利害関係がある場合はどうなるでしょうか?

他部署の同僚B1尉がC社と利害関係があったとします。

あなたとB1尉は同僚で普段からコミュニケーションをとっています。
ですが、あなた自身はC社との業務上のやり取りはありません。
その場合、あなたとC社には利害関係はないため、再就職規制にはひっかかりません。

ただし、再就職規制の調査では、B1尉が、C社に対してあなたの転職について「口利き」をした事実があるかないかの調査は入ると見込まれます。
なぜ調査があると予想できるかというと、もしB1尉がC社に口利きをして、あなたの転職が決定したとするならば、それはB1尉による「あっせん行為」であり、自衛隊法第六十五条に違反するためです。

あなたがC社に応募するのであれば、B1尉あるいはC社と利害関係がある隊員には絶対に「転職活動を行なっている」ことを伝えないようにしましょう。

同僚を守るため、あなた自身が円滑に次のキャリアに進むためにも、これは死守しましょう。


【実体験】実際に調査を受けた!

ここまでで法令についてカンタンに確認をしてきました。対象となる自衛官は転職・再就職をした場合に、再就職規制に違反していないかについて、調査を受けることがわかったかと思います。

ここから先は私の「実体験」です。

退職する前に転職先の情報を開示することを求められます。
(任意ですが、やましいことはないので無抵抗で開示しました。)

退職後しばらくして、空幕補任課の再就職管理専門官から電話で連絡が入りました。

「防衛人事審議会の再就職等監視分科会から、再就職の経緯の確認が参りました」と伝えられたため、何もやましいことがないのにドキッとした記憶があります……。
そして、「届出情報確認票」という書類への入力を求められました。

この書類には、以下の内容を記載し、提出しました。

  • 再就職の経緯について

  • 再就職の職務内容について

  • 離職当時の職務の具体的内容

これらをまとめて、メールで送信しました。

提出後しばらくして電話連絡にて、「問題なし」との連絡を頂きました。
「当たり前ですよね」と思いながら、「ホッとひと安心」したのを覚えています。

もし違反してしまったら

まずあなたが応募しようとしている企業が、今のあなたの業務について契約関係がある、あるいはあったのなら、その企業は絶対に避けてください。違反した場合、以下の処分に処せられる可能性があります。

再就職等規制違反行為があったと認められるときは、自衛隊法に基づき、「他の隊員・元隊員の再就職依頼・情報提供等の規制」違反及び「在職中の利害関係企業等への求職の規制」違反は懲戒処分、「再就職者による依頼等(働きかけ)の規制」違反は10万円以下の過料の対象となります。
また、職務上不正な行為を伴う場合は、「他の隊員・元隊員の再就職依頼・情報提供等の規制」違反及び「在職中の利害関係企業等への求職の規制」違反は懲戒処分に加え3年以下の懲役、「再就職者による依頼等(働きかけ)の規制」違反は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金の対象となります。

https://www.mod.go.jp/j/presiding/saishushoku/pdf/pamphlet_01.pdf

あなた自身が処分を受けるのはもちろんのこと、あなたのこれからのキャリアも台無しになってしまいます。

まとめ

今日は自衛官の在職中における転職活動についてお伝えをしました!

これを読んでも「自分ではちょっと判断がつかないな」と思ったら、公式LINEアカウントから「相談」と入力してください。元3佐、後方職域、補給本部経験の観点から私なりの見解をお伝えします!

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